飲食店お役立ちコラム

2022.04.25

食料・食品

食料自給率低下は日本の危機

日本の食料自給率

食料自給率とは、食料供給に対する国内生産の割合を示す指標。持続的な食料の確保が世界的な共通課題となる中で、我が国の2020年度の食料自給率(国内の食料全体の供給に対する国内生産の割合)はカロリーベースで37%、多くを海外からの輸入に頼っている状況です。これは先進国の中で最低水準であり、日本の食料自給率を上げることは喫緊の課題となっています。

日本の食料自給率を上げるためには、政府、生産者、食品関連事業者、消費者の全てが危機感を持って対処しなければならない段階にきています。この記事では、日本の食料自給率の現状や政府の取り組みについて紹介していきたいと思います。

食料自給率・食料国産率とは

食料自給率とは

食料自給率とは、国内の食料全体の供給に対する食料の国内生産の割合を示す指標で、分子を国内生産、分母を国内消費仕向として計算されます。

食料自給率には、品目別自給率と総合食料自給率があります。

品目別自給率は、特定の品目について重量ベースで計算したもの。
総合食料自給率は、食料全体について品目ごとに単位(供給熱量及び生産額)を揃えて計算したものであり、さらに以下の2種類に分かれます。

  1. カロリー(供給熱量)ベース=生命と健康の維持に不可欠なエネルギーで表したもの

  2. 生産額ベース=経済的価値に着目し金額に換算して表したもの

食料自給率は、食料安全保障を図る上での基礎的な指標として、国内生産を厳密にとらえるため、輸入飼料による畜産物の生産分を除いて計算したものです。

食料国産率とは

食料国産率は、飼料が国産か輸入かにかかわらず、畜産業の活動を反映し、国内生産の状況を評価する指標として、輸入飼料による畜産物の生産分を除かずに計算されます。上記の食料自給率の計算では輸入飼料を用いて生産された国産畜産物は、海外から輸入した畜産物と同様に自給率にカウントされていません。

輸入飼料を用いて国内生産を行った畜産物が国産とみなされないため、需要に応じて増産に取り組んできた畜産農家の努力が反映されず、また、日ごろ国産の畜産物を購入している消費者の実感とも合わないという課題がありました。 そこで、飼料が国産か輸入かにかかわらず、国内でお肉をどれだけ生産したかを評価するため、飼料自給率を反映しない「食料国産率」についても目標設定することとなった次第です。

他方で、畜産物は安価な飼料を使って高付加価値生産が行われ、国産品は輸入品より高値で取引されています。このため、卵や乳製品を含めた畜産物全体でみると、カロリーベースの自給率に比べて、生産額ベースでは高くなっているという側面もあります。

いずれにしても、国産飼料の利用拡大により飼料自給率を向上させていくことと、お肉の国内生産量の増加を通じた「食料国産率」の向上の両方を達成していくことで、食料自給率の向上が図られています。

日本の食料自給率の現状

日本の2020年度食料自給率(国内の食料全体の供給に対する国内生産の割合)は、カロリーベースで37%でした。品目別に見ると、国内で生産される割合の大きいものと小さいものでは、かなりの差があります。

【品目別の自給率(2020年度)】

日本の食料自給率の推移

日本の食料自給率は、長期的に低下傾向で推移してきました。
昭和40年度に73%の水準であった供給熱量ベースの食料自給率は、長期的に低下傾向にありますが、平成12年度以降は、40%前後の水準で推移しています。
平成23年度の供給熱量ベースの食料自給率は、前年度に不作だった小麦の生産量が回復した一方で、東日本大震災発生直後に一時的に増加した米の需要が落ち着き、需要量が減少したこと等から、前年度と同率の39%となりました。

また、生産額ベースの食料自給率も長期的に低下傾向で推移しています。平成23年度は、東日本大震災等の影響により牛肉の需要が低下し、国産品単価が下落したことや天候が安定したことで野菜の単価が低下したため、国内生産額が減少し、前年度から4ポイント低下し66%となりました。

日本の食料自給率が低い理由

米と畜産物の消費量の変化

日本の食料消費は、食生活の変化により自給率の高い米の消費が減少する一方で、飼料や原料を海外に依存している畜産物や油脂類の消費が増大してきました。

【昭和40年度と令和2年度の食料消費構造の比較】

農業生産基盤の変化

令和2年における基幹的農業従事者は136万人、平均年齢は67.8歳で、年齢構成は70歳以上の層にピークがあります。 農地面積は、主に荒廃農地の発生や宅地用への転用などにより減少しています。

食料自給率が低い場合のリスクとは

日本の食料自給率が38%ということは62%の食料(カロリー)を海外からの輸入に頼っているということになります。これは、先進国の中で最下位の食料自給率となっています。

世界の人口は1970年には約37億人でしたが、現在は77億人と倍以上に増加、2050年には100億人を超えるという試算もある中で、世界的な食料不足が懸念されている今、日本がこれまで通りに海外から食料を輸入できる保証はありません。
さらに人口増加による食料不足以外にも、異常気象による自然災害や家畜疾病の流行、輸出国の政情不安、感染症の流行など様々な輸入リスクが想定されます。

日本人が食べる食料を、将来にわたって確保していくためには食料自給率を上げていかなければならないのです。これは大袈裟でなく、日本が存続していく上で最も重要なテーマと言えます。

食料自給率の目標

国の目標として、食料自給率を2030(令和12)年度までに45%に上げるという目標を立てました。この目標の達成に向け、農林水産省では生産者に対し様々な施策を行っています。

  • 需要が減少する米から自給率が低い麦や大豆等へ生産を転換するための支援

  • 品目毎に、将来にわたって農業が続けていけるための支援

  • 効率的・省コストで生産するための新しい技術の導入支援

  • 生産基盤である農地や担い手を確保していくための支援

  • 輸出の拡大にむけ、海外で日本の農産物をPRするための支援 等々

ただ、食料自給率の向上には生産だけでなく国内消費の面からの取組も必要です。食品関連事業者が食料自給率の高い日本の食材を積極的に使用したり、消費者が意識を高め消費量を増やすための施策が望まれます。

参考記事
ユネスコ無形文化遺産「和食文化」を見直そう
料理マスターズに見る飲食店のコンセプト

食料自給率低下は日本の危機:まとめ

これまでの日本は食の外部化・簡便化が進み、食と農との距離が遠くなり、農業に対する意識・関心は薄れてきました。食料自給率の低さは、日本の危機とも言えます。消費者、生産者、食品関連事業者が一体となって自分たちの課題と捉え、行動変容に繋げていくことが必要です。

日本の生産者が美味しいものを生産して、食品加工・販売企業、外食企業がそれを仕入れ提供、消費者が国産食材や国産品を使った商品・料理を選択する、という循環が上手く機能することが日本の食料自給率アップに繫がります。 2030年度までに食料自給率45%という目標に向けて、私たち一人ひとりができることを行動に移すことが求められています。

農林水産省:知ってる?日本の食料事情 2022(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/panfu1-8.pdf)/お肉の自給率(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-04.html)を加工して作成

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