飲食店お役立ちコラム

2024.04.1

経営

【飲酒ガイドライン】飲食店への影響は? 

2月19日、厚生労働省は国として初めての指針となる「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表しました。大手アルコール飲料メーカーは、高アルコール度数の商品について販売の是非を検討するほか、居酒屋をはじめとする飲食店から様々な声が上がっています。
この記事では、飲酒ガイドラインが公表された背景や影響について紹介します。

飲酒ガイドライン公表の背景

成人一人当たりのアルコール消費量は、1992年度の101.8リットルをピークに2021年度には74.3リットルまで減少しました。

その要因として、若者のアルコール離れや、少量の飲酒でも病気のリスクが高まることが最近の研究で分かってきたことで飲酒をやめるなど、飲酒習慣の変化が考えられます。

出典:国税庁 酒レポート
(https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2023/pdf/0002.pdf)

ところがアルコール性肝疾患による死者数は、2019年の5,480人から、2021年では6,016人と、アルコール消費量が減っているのに反して、増加していることがわかりました。飲まない人と深酒する人の二極化が進み、コロナ禍が拍車をかけたようです。
出典:厚生労働省 アルコール健康障害対策推進基本計画(https://www.mhlw.go.jp/content/12205250/001151471.pdf)

こうした中、厚生労働省は2月、初指針となる「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を策定しました。お酒に含む純アルコール量を基準に疾患別にリスクを例示しています。

健康に配慮した飲酒に関するガイドライン

厚労省は飲酒ガイドラインを、2024年2月19日に正式発表しました。お酒の純アルコール量1日当たりの摂取量と、疾患別の発症リスクを例示しています。

厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」から抜粋

  • 飲酒量の把握の仕方 お酒に含まれる純アルコール量は、
    純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)
    例: ビール500ml(5%)の場合の純アルコール量 500(ml) × 0.05 × 0.8 = 20(g)

  • 飲酒量と健康リスク 世界保健機関(WHO)では、アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略を示しており、また、循環器疾患やがん等の疾患の予防コントロールのため、アルコール有害使用の削減に関する目標なども含めた行動計画を発表しています。さらに、飲酒量(純アルコール量)が少ないほど、飲酒によるリスクが少なくなるという報告もあります。

  • 例えば、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中など の場合は、たとえ少量であっても飲酒自体が発症リスクを上げてしまうこと、大腸がんの場合は1日当たり 20g程度(週150g)以上の量の飲酒を続けると発症の可能性が上がる等の結果を示した研究があります。

我が国における疾病別の発症リスクと飲酒量(純アルコール量){参考文献}

  • 上記の飲酒量(純アルコール量)の数値のうち、「研究結果」の欄の数値については、参考文献に基づく研究結果によるもので、これ以上の飲酒をすると発症等のリスクが上がると考えられるもの。

  • 「参考」の欄にある数値については、研究結果の数値を元に、仮に7で除した場合の参考値(概数)。

  • 「0g<」は少しでも飲酒をするとリスクが上がると考えられるもの。「関連なし」は飲酒量(純アルコール量)とは関連が無いと考えられるもの。「データなし」は飲酒量(純アルコール量)と関連する研究データがないもの。

  • 「※」は現在研究中のもの。

これらの飲酒量(純アルコール量)については、すべて日本人に対する研究に基づくものとなります。

飲酒ガイドラインに対するメーカーの反応は?

アルコール度数が8〜9%程度の「ストロング系」缶チューハイが、価格も安く人気を集めていましたが、ロング缶1本で純アルコール量は30グラムを超えてしまいます。メーカーではすでに今後8%以上の缶チューハイの新商品を発売しない方針を決めているとのことです。

飲酒ガイドラインに対する飲食店の反応は?

飲食店の反応は様々となりました。

  • コロナで遠ざかった客足がようやく戻ってきて、いままでマイナスだった利益をこれから取り戻すぞという矢先、なぜこのタイミングで、という気持ちが大きい

  • 問題はない。むしろ各個人に合った飲み方を推奨するもので、我々居酒屋業では20歳未満に飲酒をさせない大原則を強く推進していくのみ

  • むしろ現在進行形であるノンアルコール飲料の拡大につながる

飲酒ガイドライン対策「ノンアル・微アル」

大手アルコール飲料メーカーなどが、微アル飲み会を提唱しています。また、日々の飲酒量を記録する飲酒量レコーディングと呼ぶアプリの展開も見られます。その他、ノンアル飲み放題などのメニューを提供したり、取り扱い酒類や販売方法などの見直しを行い、微アル・ノンアルに合うメニューの開発などの対策が考えられるでしょう。

参照:【変わる飲酒習慣】ノンアルコールが注目の的に!

【飲酒ガイドライン】飲食店への影響は?:まとめ

厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」の公表により、アルコール業界に変化の兆しが見られます。

大手メーカーは高アルコール度数商品の販売見直しを検討し、飲食店もそれぞれの立場から異なる反応を示していますが、一方で、この指針は個々の健康に合わせた飲酒の促進を図るものであり、ノンアルコールや微アルコールの需要が増す可能性もあります。今後、アルコール飲料メーカーがこの指針にどう適応していくかを注目していきましょう。

厚生労働省:わが国の飲酒パターンとアルコール関連問題の推移
(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-06-001.html)
健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf)を加工して作成

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