飲食店お役立ちコラム

2022.03.21

経営

料理マスターズに見る飲食店のコンセプト

料理マスターズ

農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」をご存じですか? 「料理マスターズ」とは、日本の食・食材・食文化の素晴らしさや奥深さにこだわりを持ち続け、生産者や食品企業等と協働して食文化の普及の取組に尽力した料理人を、国が顕彰する制度です。

この記事では、「料理マスターズ」が制定された背景や目的、受賞者の取り組み例を紹介していきます。

農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」とは

日本人の伝統的な食文化は、ユネスコ無形文化遺産にも登録され、世界でも注目を集めてきました。その背景には、四季折々の豊かな自然の恵みを受け発展した地域の食文化や、それを支える農林水産業により培われてきた日本人の食に対する意識や味覚の高さがあります。しかし、食のグローバル化が進むにつれ、食の季節感や地域に伝わる食文化が希薄になり懸念されています。

こうした状況の中、農林水産省は生産者や 食品企業等と「協働」して地産地消や食文化の普及の取組に尽力した料理人を国が顕彰し、その活動を拡大・普及させていくために、料理人顕彰制度「料理マスターズ」を制定しました。

「料理マスターズ」顕彰の対象者

提供する料理・サービスが優れていると認められる現役の料理人(パンや菓子の職人を含む)のうち、5年以上にわたり次のいずれかの取組を行い、他の模範とするにふさわしい功績のあった者を対象として実施されます。 これらの取組には、料理人個人のみならず、料理人の所属する飲食店、旅館、ホテル等の経営者や食材調達部門等の者と共同して行われたものも含まれます。

  • 産地と連携し、地域の風土や調理法に適した作物の導入、伝統野菜の復活・地域農産物の発掘、地場素材を活用したメニュー開発によって、産地の形成や農林漁業者の所得向上等地域の活性化や雇用の拡大に貢献する取組

  • 食品産業と連携し、食品や調味料の開発や、国内の食材を利用した新たな調理法の開拓を通じた当該食品の普及によって、地域の食材の普及や食文化の発展に貢献する取組

  • 日本の食材や食文化、調理技術について、日本人以外の料理人への教授・ 指導を通じ、海外における日本の食文化の普及と食品企業の海外展開に貢献する取組

「料理マスターズ」の応募

「料理マスターズ」は、以下の3つの賞が設けられています。

  • ブロンズ賞=5年以上の取り組み

  • シルバー賞=引き続き5年以上の功績

  • ゴールド賞=さらに5年以上の顕著な功績

他薦による応募は、料理人本人の了解を得るものとし、また満20歳以上の者、且つ料理人本人と三親等以内の親族でないものでなければならないとされています。

「料理マスターズ」の決定

「料理マスターズ」顕彰は、毎年度1回行なわれ、「食文化」に詳しい学識経験者、「調理の技術」知見者、「食」に造詣が深い文化人・芸能人、農林漁業関係者、食品製造・流通関係者、マスメディア関係者、ゴールド賞受賞者などの審査委員会で公正な選考が行われ、農林水産大臣が決定します。

「料理マスターズ」受賞例

料理マスターズ ゴールド賞受賞者:例

フランス料理レストラン.1 料理人

環境に配慮した「伊達鶏」の開発、廃熱活用の鰻養殖やマンゴー栽培等、農に付加価値を与える取組を生産者と協働して行う。

孤食や食品が簡単に入手できるようになったことなど環境の変化を受け、子供の「食」が貧しくなるのではという危機感から、地元の小学校で親子料理教室や親向けの講話を行う。また調理実習や自店舗でのテーブルマナー体験により、子供に味覚や食体験の授業を長年行う。

フランス料理レストラン.2 料理人

日本各地で北海道の特産品やその土地の食材をテーマに、食材の良さを引き出す手法や地域の食材の魅力を発見・発信する方法についての講演を定期的に実施する。

企業と協働し、奈良県の社員食堂をリニューアルすることで福利厚生の向上に繋がるプロジェクトを行う。社員食堂で使われる食材は、北海道の生産者から直接仕入れたものを使用することで北海道食材の県外発信に繋げると共に、継続して使用することで生産地域の収益の安定化に貢献。

料理マスターズ シルバー賞受賞者:例

中国料理店 料理人

国産ワインブームの裏側にある搾りカスが産業廃棄物問題となっている事象に着目。資格取得で得た知識を活かし、搾りカスを発酵させて牛・鶏卵・マス等の飼料にする「資源循環型農業」を地域と連携して行う。

鶏卵を産まなくなった烏骨鶏の活用方法に悩む生産者の話を聞き、料理法やレシピの提案として実際に店舗で提供を行う。急速冷凍加工や保管場所の整備を行うことで、長期保存が可能となり、年間を通して安定した供給ができるようになった。

料理マスターズ ブロンズ賞受賞者:例

日本料理店(寿司) 料理人

新潟の魚を知るために、漁協に出向き、漁師の方たちと情報交換を密に行う。彼らが自家消費していた魚類を買取り、収益化に繋げるなどの取組を行う。

店で使う食材は、魚、野菜から調味料に至るまで殆ど新潟県産のものを使用し、新潟県産食材の魅力を料理で発信している。

料理マスターズに見る飲食店のコンセプト:まとめ

「料理マスターズ」の料理人と飲食店、その関係者の方々は、日本の食・食材・食文化の素晴らしさや奥深さ、その魅力に誇りとこだわりを持ち続け、生産者や食品企業等と協働して地産地消や食文化の普及の取組に尽力してきました。「料理マスターズ」の認知度が高まり拡大していけば、地域活性化と共に、飲食店の料理人が日本のソフトパワーの1つになることが期待されます。

「モノ消費・コト消費」の時代が終わり「イミ消費」が注目される今、美味しいものを提供するだけでなく、食を通し、料理人・飲食店のコンセプトを伝えることが必要になってきています。強い目的意識を持つ「料理マスターズ」たちは、飲食店のコンセプト作りの参考になるのではないでしょうか。

農林水産省:農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/kensyou/attach/pdf/index-32.pdf)を加工して作成

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