飲食店お役立ちコラム

2024.02.5

食料・食品

【牛乳・乳製品】不足から過剰に揺れる需要と供給

2014年頃に話題になったバター不足。ところが2021年には生乳の供給過剰で大量廃棄の懸念を受け、岸田首相による牛乳の消費拡大への協力呼びかけが話題になりました。

飲食店にとって牛乳・乳製品の果たす役割は大きいため、牛乳・乳製品の生産動向や価格が気になるのではないでしょうか。この記事では、最近でも度々ニュースに取り上げられている牛乳・乳製品の状況について確認していきます。

飲食店における牛乳・乳製品の役割

乳製品を使用する飲食店は多岐にわたります。 ピザ店では、チーズはピザの重要なトッピングであり乳製品が必須です。 フレンチレストランではソースやデザートの材料に、イタリアンレストランではパスタソースやリゾットなど乳製品がよく使用されます。 またカフェであれば、ラテやカプチーノなどのミルクを使用するコーヒー類、ケーキやスイーツにはバターやクリーム、チーズなどの乳製品がよく使用され、チーズを使用したサンドイッチもあります。

このように、牛乳・乳製品は飲食店にとって無くてはならないものであり、メニューのバリエーションを豊富にしてくれます。

牛乳・乳製品の品目別構成比

以下は、令和3年経済センサス‐活動調査の製造業集計結果です。牛乳・乳製品の製品別構造を見るため、品目別製造品出荷額を確認します。

ヨーグルトなどの発酵乳、脱脂乳、カゼイン、乳糖等を含む「その他の乳製品」が23.5%と、最大の構成比となっています。次いで、「処理牛乳」と「乳飲料、乳酸菌飲料」が続き、この2品目での「飲料用」が全体の4割弱を占めています。

加工品では、アイスクリーム、チーズ、練乳等(練乳、粉乳、脱脂粉乳)、クリーム、バターの順となっており、このように2014年に不足したバターは、2020年の牛乳・乳製品の中で最も構成比が低いことが分かります。

牛乳・乳製品の生産推移

次に、牛乳・乳製品の生産状況を四半期別にみると、バター不足となった2014年第3期を底として回復していることが分かります。

2020年の第1四半期には、新型コロナウイルスの影響で学校給食が停止し、その結果、処理牛乳から高付加価値の乳製品への生産が増えました。
しかし、これにより乳製品の在庫が過剰となり、年末には大幅な生産調整が行われ、牛乳が余ってしまいました。これが首相の発言につながったと考えられます。

2021年も、新型コロナウイルスの影響で飲食店などの需要が減少し、一方で加工品の製造は好調でした。その結果、生産指数は通年で100を超え、2年連続で年末には生乳が余り、牛乳の消費促進が求められました。

2022年は、前年の余剰を受けて第2四半期に在庫調整が行われ、生産は大幅に低下しました。現在、生産水準は新型コロナウイルス感染症が拡大する前の水準まで下がっています

保存の利く乳製品への生産シフト

次に農林水産省が実施している牛乳乳製品統計で個別商品ごとに数量ベースの生産量の前年比増減率推移を見ると、牛乳の余剰をうけ、保存の利く乳製品へ生産がシフトしている動きが見られます。

特に粉乳類、バターの生産の伸びが大きくなっていますが、これは生産推移と同じく、新型コロナウイルスの影響で学校給食の停止で牛乳等の需要が減少したことや、緊急事態宣言以降の外食産業などで使用される業務用需要の減少等により、2020年以降、保存の利く乳製品の生産はフル稼働していても生乳が余る状況になっていたためと思われます。

牛乳・乳製品生産の課題

牛乳及び乳製品の生産と供給は、多くの課題を抱えています。その一つが、製造過程の特殊性です。牛乳からは生クリームと脱脂乳が分離され、生クリームを攪拌することでバターが、脱脂乳を乾燥させることで脱脂粉乳が生成されます。そして、これらのバターや脱脂粉乳に水を加えることで、元の牛乳(加工乳または還元乳)に戻すことが可能です。

国内生産が不足する場合、輸入が解決策となるかもしれません。しかし、政府は輸入したバターが余り、加工乳が過剰に生産されることを懸念しています。そのため、国内の酪農を保護する目的で、保存が利くバターには高率の関税を課し、輸入品からの還元乳生産を制限するなどの措置を講じています。

また、乳牛は生物であり、季節によって生乳の生産量が変動します。これが需給バランスを維持することを難しくしています。

「需給バランスが崩れ減産せざるを得ない→一度減産すると増産には期間を要する→また情勢が変わり増産に踏み切る」

引用元:よつ葉乳業 なぜ起こる? 生乳需給バランス崩れのお話し()https://www.yotsuba-shop.com/column/story/detail/66

このような繰り返しは、生乳の廃棄やバター不足を引き起こす原因となっています。

【牛乳・乳製品】不足から過剰に揺れる需要と供給:まとめ

最近では、牛の飼料代、燃料・資材価格が高騰していることから、乳価値上げが起こっていますが、酪農家の経営を支え、牛乳・乳製品の原料となる生乳を生産できる環境を整える必要があるためです。

引用元:全国の牛乳1本価格推移(https://jpmarket-conditions.com/1303/)

牛乳・乳製品の安定供給の面からも、バターなどの保存が可能な乳製品に一定割合を仕向ける流通は維持しつつ、牛乳の消費拡大と畜産農家の経営安定のための価格引き上げが求められます。
牛乳・乳製品を利用する飲食店では、メニューを考える上で、今後も牛乳・乳製品の生産動向や価格の変動に注意をはらう必要があるでしょう。

経済産業省:牛乳・乳製品の生産動向(https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20230329hitokoto.html)を加工して作成

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