飲食店お役立ちコラム

2022.04.11

経営

フードテックと外食産業

フードテック(代替肉)

フードテックとは、Food(フード)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、 多様な食の需要に対応するための新しい技術。最先端のIT技術を活用することで食の持つ可能性を広げるフードテックは世界中で大きな注目を集め、今後日本の成長産業としても期待されています。

この記事では、外食産業にも関わりの深い、フードテックについて紹介します。

フードテックが注目される背景

フードテックが世界中で大きな注目を集める背景には、人口増加にともなう食糧不足や環境問題、健康意識の高まりなどがあります。

食糧不足

農林水産省の2050年における世界の食料需給見通しによると、人口増加と経済発展により2050年の世界の食料需要量は2010年比1.7倍となると予測されています。 多くの農産物を輸入し、先進国のなかでも食料自給率が低い日本にとって、食糧不足は深刻な問題と言えるでしょう。

畜産環境問題

畜産からは、主に家畜排せつ物管理に由来するメタン、及び⼀酸化⼆窒素、消化管内発酵に由来する温室効果ガスが排出されます。

牛のゲップからメタンガスという温室効果ガスが排出される点については、地球環境問題に関連してよく耳にするようになりました。日本でも、全温室効果ガスのうち農林水産分野は約2.8%であり、そのうち約20%が牛の消化管内発酵によるメタン産生量となっています。

参照:農林水産省 牛の生体・個体差に基づく消化管内発酵由来CH4削減技術の開発(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/attach/pdf/kentoukai-10.pdf)

食品ロス

国際連合食糧農業機関の報告書によると、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されており、日本でも1年間に約612万トン(2017年度推計値)もの食料が捨てられています。一方、途上国を中心に8億人以上が十分な量の食べ物を口にできず、栄養不足で苦しんでいるという現状があります。

参照:農林水産省 食品ロスの現状を知る(https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html)

関連記事:飲食店が取り組む食品ロス対策

健康意識の高まり

世界的な健康意識の高まりにより、オーガニック食材やグルテンフリー穀物、そして大豆などの植物性タンパク質を肉状に加工した代替肉が注目されています。 代替肉は、牛肉と比較すると鉄分や葉酸などが豊富に含まれていることや、人・社会・地球環境への配慮を重視するエシカル消費の流行、菜食主義者や準菜食主義者などの増加も、植物肉が注目される大きな要因です。

関連記事:【代替肉】世界的なブームに外食産業も参入

日本のフードテックの現状

世界的に健康志向や環境志向等、食に求める消費者の価値観が変化していること等を背景に、生産から流通・加工、外食、消費等へとつながる食分野の新しい技術及びその技術を活用したビジネスモデル「フードテック」への関心が高まりました。日本のフードテック分野への投資額は年間2兆円を超えてます。しかし、米国、中国、インド、英国などと比べて、日本の投資額は小さいようです。

出典:農林水産省 フードテックへの投資の状況(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/foodtech/foodtech_kenkyukai_torimatome.pdf)

フードテックによる食糧不足・畜産環境問題の解決

世界規模での人口増や気候変動によるタンパク質摂取不足の解決策として、フードテックの代表とも言える代替肉が注目されています。 フードテックにより植物性たんぱく質から肉を再現したり、必要な栄養素を摂取できる食品開発することが可能

また、牛を育てるためには大量の資源が必要でありメタンガスを多く排出し地球温暖化にもつながると言われていますが、フードテックは食糧不足と同時に畜産環境問題の解決にも寄与します。

フードテックによる食品ロスの解決

流通・外食産業におけるデジタル活用

諸外国に比べ遅れをとっていますが、日本でも飲食店の売れ残り品を消費者に安価に提供したり、生産者や食品流通業者で、良質だけど余剰になっている加工品、規格外の野菜や果物、海産物などの訳あり品を外食店・企業・団体などを主にBtoBでマッチングするフードシェアリングサービスなどが始まりました。

また、SDGs(持続可能な開発目標)では、2030年までに世界全体の一人あたりの食料廃棄を半減させ、収穫後損失などの食品ロスを減少させるとの目標を掲げています。日本政府も「SDGsアクションプラン2018」において、家庭の食品ロス削減の取り組みの普及啓発、食品産業に対するフードバンク活動の推進、サプライチェーンの商習慣の見直しなどの取り組みを進めています。

フードテックと外食産業:まとめ

フードテックは、世界的な人口増加にともなう食糧不足や環境問題などを解決する新しい技術及びその技術を活用したビジネスモデルであり、産業の競争力を高める上でも不可欠となっていきます。日本でも徐々に多くのフードテックベンチャー企業が現れ、国もフードテック等を活用した持続可能な産業育成に力を入れ始めました。

外食産業に焦点を当てると、人手不足の課題に対して、調理の自動化やセルフオーダーシステム等、技術を活用し様々な方法で課題解決が行われています。フードテックによる食糧不足などの解決に加え、今後も仕入れや食材管理についてもIT化を進め、外食産業においてもフードテックの新たな市場を創出していくことが求められるでしょう。

農林水産省
畜産環境をめぐる情勢(https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/pdf/210325kmegji.pdf)
2050年における世界の食料需給見通し(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_zyukyu_mitosi/attach/pdf/index-12.pdf)
フードテックの現状(https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r2/r2_h/trend/part1/chap0/c0_7_00.html)
を加工・参照して作成

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