飲食店お役立ちコラム

2022.09.12

食料・食品

日本の食文化を次の世代へ

日本の食文化

四季に恵まれ海に囲まれる日本には、豊かな風土や人びとの精神性、歴史に根差した多様な食文化が存在しています。
日本の食文化には、繊細な器の美、美しい盛付、もてなしの心、旨味という調理技術などの優れた特色があるだけでなく、栄養バランスに優れた健康的な食として、世界中から大きな関心が寄せられています。
この記事では、あらためて日本の食文化を知るために、文化庁「食文化あふれる国・日本」より日本の食文化の5つのテーマについて紹介していきます。

日本の食文化を伝えるテーマ

日本の食文化 1. 技

日本には生の魚を食べるという文化があるため、手早く、手際よく、美しく切る技術が磨かれていきました。その際に用いられるのが、切れ味が鋭く、繊細に刃先が動かせる日本独特の片刃包丁です。

一流の料理人による巧みな包丁さばきや、洗練された盛付の美しさのほかに、甘味、酸味、塩味、苦味に加えて、第5の味覚「旨味」を引き出す出汁を活かした調理法も、日本料理の技術を高めています。

さらに、年月を重ね、熟成させてみそやしょうゆなどをつくる発酵技術や、酒づくりに長けた杜氏の技術など、日本が誇る多様な技があります。

日本の食文化 2. 伝統

日本の食文化は年中行事との関りが深く、行事ごとに特別な料理が用意されてきました。お正月には屠蘇酒(とそざけ)やおせち料理、3月3日の上巳の節句「ひな祭り」にははまぐりの潮汁や菱餅(ひしもち)、5月5日の端午の節句「子どもの日」にはちまきや柏餅などの行事食を用意し、厄を払い、子どもの成長や五穀豊穣を願ってきた伝統があります。

また、成人式や結婚式、出産祝、長寿祝など人生の節目ごとに、赤飯や尾頭付きの魚などが用意され、食の習わしや食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を強め、伝統を受け継いできました。

日本の食文化 3. 郷土料理

前記事で紹介したように、日本には、地域独特の風土や食材、歴史、文化などに育まれ、受け継がれてきたさまざまな郷土料理があります。
参照:郷土料理でインバウンド復活の準備を

みそやしょうゆなどに代表される発酵調味料も地域ごとに味わいが異なります。
また、海外との交流により砂糖や唐辛子、ジャガイモなどをもたらした南蛮文化や、本来は米の輸送用であり帰り荷として運ばれた昆布が、京都や大阪の食を支えることになった北前船などは、地域固有の食習慣にも大きな影響をもたらしました。郷土料理は地域間の交流によっても変容し、独自性を増していったのです。

日本の食文化 4. 器・しつらえ

日本料理の器は、漆器や陶器、磁器など、それぞれ類を見ないほど種類が多く、日本らしさを感じさせる四季折々の自然や花鳥風月などが美しく表現されています。

また、生け花や掛け軸などで室内を装飾したり、季節の花などで料理を飾り付けしたり、相手をもてなすために整えるしつらえも、日本の食文化ならではの慣習。このもてなしの精神は茶事の基本であり、懐石料理はその影響を大きく受けています。料理を引き立てる器やしつらえへのこだわりは、日本人の美意識ともてなしの心から生み出されているのです。

日本の食文化 5. 季節

日本には、味覚だけでなく視覚でも楽しみ、季節を慈しむ文化があります。

四季が明確な日本では、それぞれの季節に最もおいしくなる「旬」の食材を大切にしてきました。さらに、出始めの「はしり」、季節の終わりの「名残り」など、繊細な季節の変化を味わうことができます。
料理を季節の花や葉などで飾り付けし、その季節に合った器や調度品を利用して四季の移ろいや自然の美しさを楽しみます。和菓子では、春は桜や菜の花、夏は朝顔や七夕、秋は紅葉や栗、冬は寒椿や水仙など、四季の風情が表現されていて、鮮やかな色や形などで季節の到来を知らせてくれます。

日本の食文化を次の世代へ:まとめ

普段は日本の食文化について意識することがありませんが、上記のように文章に起こしてみると、いかに「日本の食文化」が特別なものであり、素晴らしいものでるかをあらためて感じますね。

現在では、ここで紹介した日本の食文化をささえる技や技術を一般家庭で再現するのは難しく、プロである飲食店の料理人の力が必要です。また訪日外国人の受け入れが進んでおり、今後はインバウンドが復活すると思われますが、外国人観光客に日本の食文化を体験してもらうのも、やはり飲食店が中心となります。

世界に誇る「日本の食文化」を次の世代へ繋いでいくために、飲食店の役割がますます大きくなっていくでしょう。

文化庁:食文化あふれる国・日本(https://www.bunka.go.jp/foodculture/)を加工して作成

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