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2022.08.1

集客

郷土料理でインバウンド復活の準備を

郷土料理

日本の外国人観光客の受け入れが、6月から添乗員付きのツアーで再開され、今後徐々に増えていくことが予想されます。
外国人観光客による飲食市場の需要回復に向けての記事で紹介したように、外国人観光客はいわゆる日本食というよりも、その地域固有の食文化や郷土料理を求めていることが調査で示されています。

農林水産省では、食品製造企業での商品化や、外食企業でのメニュー化などに活用できるようにと、各地域で選定された郷土料理のいわれ・歴史やレシピ等、また、郷土料理を生んだ地域の背景等について情報発信をしています。
この記事では、主に飲食店が提供している郷土料理の一部をピックアップして、紹介していきます。

飲食店で提供される郷土料理例

【北海道の郷土料理】豚丼

明治時代末ごろから養豚業が盛んであった十勝地方の帯広市が「豚丼」発祥の地といわれています。厚切りの豚肉を砂糖醤油で味付けしたタレでからめ、ごはんの上にのせた「豚丼」は帯広市の名物料理となり、いまでは全国でも知られるほど有名となりました。

近年はご当地グルメや郷土料理として注目を集め、グルメ雑誌やガイドブックにも掲載されていることが多く、全国各地から観光客が訪れています。

【岩手県の郷土料理】ひっつみ

岩手県は寒さが厳しく冷害で米がとれない年もあり、食生活を安定させるために米粉・小麦粉・そば粉などを活用する料理が多く、粉に水を入れてこねて作る料理文化が発達し、その代表的な料理のひとつ「ひっつみ」は、米が不作な年に主食の替わりとして多く食され、岩手県の郷土料理となりました。

地元の飲食店や宿泊施設で独自メニューの開発を行うなど、家庭料理である「ひっつみ」を町の名物に育てることを目指しています。岩手県は「ひっつみ」をはじめ、郷土料理を伝承する人や団体を「岩手県食の匠」として認定しています。

【福島県の郷土料理】いかにんじん

いかにんじんは、するめいかとにんじんを細切りにし、醤油とざらめ、またはみりんの甘辛いたれに漬けたおかず。
にんじんとするめの食感と甘味のあるつけだれがクセになり、ご飯が良く進む一品と人気の郷土料理です。スナック菓子の味に採用されたり、かき揚げや炊き込みご飯などのアレンジ料理が展開されたりと、さまざまな形で愛されています。

「いかにんじん」をお通しにするなど郷土料理を積極的に提供し、集客に成功している居酒屋もあり、福島の郷土料理を観光分野でも盛り上げていこうという地元企業の取り組みが始まっています。

【埼玉県の郷土料理】冷や汁/すったて

埼玉の郷土料理「冷や汁」は、稲作の裏作として小麦の栽培が広く行われた“うどん文化”のある土地ならではの、うどんのつけ汁として食べられてきました。
収穫したばかりの野菜と、冷たい水を使い仕上げる「冷や汁」は、夏の炎天下で農作業をする人々から親しまれてきた郷土料理です。「すったて」とは、野菜などの具材をすりばちですり、「すりたて」を食べていたことに由来します。

県内の飲食店では地元の食材を使い、麺やつけ汁に独自のアレンジを加え提供しています。

【東京都の郷土料理】もんじゃ焼き

江戸時代末期、月島の駄菓子屋の前で手頃なおやつとして売られていたのがもんじゃの根源です。子どもたちに小麦粉を水に溶いた生地で鉄板に文字を書いて教えたり遊んだりしていたことから「文字焼き」と呼ばれ、もじがもんじと転じて「もんじゃ」へ変化していきました。

もんじゃ焼きの振興を目的として創立された「月島もんじゃ振興会協同組合」には現在、月島地区のもんじゃ屋54店舗が加盟しており、加盟店で使える食事券を発行したり、東京下町月島もんじゃの味を広めながら毎年フェアを開催して盛り上げています。

【静岡県の郷土料理】金目の煮付け

伊豆半島は金目鯛の産地であり、静岡県の郷土料理。 金目鯛の代表的な料理は刺身や煮付けであり、煮付ける場合、切り身あるいは一匹そのままの姿を醤油、酒、砂糖で甘く煮ます。近年は、刺身、煮付け以外のメニューも多く開発されています。

金目の煮付けをアレンジした、コロッケやバーガー・ラーメン・シューマイなど新たなメニューが考え出され、飲食店で提供されています。

【岐阜県の郷土料理】鶏ちゃん(けいちゃん)

鶏肉と野菜に特製のたれを絡めて炒めたものが「鶏ちゃん」。地域や家庭によって味付けはさまざまです。
名前の由来は、豚のホルモン焼きを「トンチャン」と呼ぶことから「ケイチャン」といわれる説や、混ぜ合わせるという意味の「ちゃん」と「醤」を合わせた「鶏醤(けいじゃん)」から「鶏ちゃん」になったという説もあります。

郡上市明宝地域では「めいほう鶏ちゃん研究会」により、地域の鶏ちゃんが味わえる飲食店を紹介するマップが制作され、観光資源のひとつとして郡上市のPRに貢献、全国のグルメイベントにも登場しています。

郷土料理でインバウンド復活の準備を : まとめ

ここでは、飲食店で提供されている郷土料理の一部をピックアップして紹介してきましたが、農林水産省の「うちの郷土料理~次世代に伝えたい大切な味~」では、日本全国の郷土料理が詳しく紹介されていますので、メニューつくりの参考になると思います。

農林水産省「うちの郷土料理~次世代に伝えたい大切な味~」

メジャーな郷土料理以外にも、珍しい料理も多く掲載されていますので、お通し( 突き出し)に提供したり、アレンジしてメニューに取り入れてみてはいかがでしょうか。

メニューに郷土料理を入れることは、集客と同時に地元の食文化を継承していくことに繋がります。旅行客へSNSなどで郷土の魅力的なストーリーを伝えるなど、その地域ならではの食文化を体験してもらえるよう、今度のインバウンド復活に備えていきましょう。

農林水産省:うちの郷土料理(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/index.html)を加工して作成

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