飲食店お役立ちコラム

2022.12.5

経営

インボイス制度が飲食店に及ぼす影響とは

インボイス制度

2023年10月1日から、消費税額の仕入税額控除の方式として、インボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートします。インボイス制度では、区分記載請求書に代えて適格請求書と帳簿の保存が仕入税額控除の要件となります。

飲食店もインボイス制度開始後は、顧客に飲食代の領収書を提出したり、免税事業者から食材を仕入れる場合などに影響を受けますので、制度についてよく理解しておくことが必要です。

この記事では、インボイス制度が飲食店の仕入税額控除に及ぼす影響について、現時点での国税庁の情報を元に紹介していきます。

インボイス制度について

適格請求書(インボイス)とは

適格請求書(インボイス)とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。 具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

売手側

売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません。また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります。

買手側

買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。

買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、インボイスに記載が必要な事項が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

適格請求書発行事業者登録制度

適格請求書発行事業者となるためには、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し登録を受ける必要があり、これまで免税されていた売上1000万円以下の事業者も、適格請求書発行事業者になるためには消費税を納めることになります。

適格請求書発行事業者の登録をすること(=課税事業者になること)は任意ですが、インボイス制度後は、課税事業者、また免税事業者である飲食店共に影響がでることが考えられます。

インボイス制度に関わる仕入税額控除とは

課税事業者がインボイス制度で影響を受けるのは、消費税の仕入税額控除です。 仕入税額控除とは、消費税を納税する際に、課税売上の消費税額から課税仕入れの消費税額を差し引くことで、二重課税を解消する制度です。

現在の仕入税額控除

消費税の納付税額は、課税期間中の課税売上げに係る消費税額からその課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額(仕入控除税額)を控除して計算します。課税仕入れとなる取引には次のようなものがあります。

  • 商品などの棚卸資産の購入

  • 原材料等の購入

  • 機械や建物等のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入または賃借

  • 広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払

  • 事務用品、消耗品、新聞図書などの購入

  • 修繕費

  • 外注費

給与等の支払は課税仕入れとなりませんが、加工賃や人材派遣料のように事業者が行う労働やサービスの提供の対価には消費税が課税されます。したがって、加工賃や人材派遣料、警備や清掃などを外部に委託している場合の委託料などは課税仕入れとなります。

現在では、免税事業者や事業者ではない消費者から仕入れた場合も、仕入税額控除の対象となることから、その支払った対価の額は消費税および地方消費税込みの金額とされますので、その対価の額の110分の7.8(軽減税率の適用対象となる課税仕入れについては108分の6.24)相当額は、消費税額として仕入税額控除を行うことができます。

インボイス制度が飲食店へ及ぼす影響

飲食店(課税事業者)の仕入れ先が免税事業者の場合

インボイス制度では、仕入れ先が課税事業者であれば適格請求書を発行してもらうことで、これまで通り仕入控除税額を受けることができます

しかし、仕入先が免税業者の場合は、仕入税額控除ができなくなります。免税業者は適格請求書の発行ができないため、課税売上の消費税額から課税仕入れの消費税額を差し引くことができず、これまでよりも余分に消費税を納めなければなりません。

そこで、仕入先に値引きを要求するか、適格請求書を取得できる仕入先に変更することが考えられます。そのためインボイス制度は免税業者にとって大きな問題となっていますが、仕入れる側にとっても同様です。

飲食店の顧客への影響

飲食店の顧客は、一般消費者が多くを占めると思いますが、この場合はインボイス制度による影響はなく、これまでとかわりません。

飲食店の顧客の中には接待で利用する方もいます。接待交際費に計上するために領収書やレシートをインボイスとして利用することになりますが、この内容にも適格請求書の登録番号や税区分と消費税などを記載しなければなりません。
インボイス対応のレシート・領収書であれば、お客さまの会社では仕入税額控除を受けることが可能です。

ところが、一人でオーナー経営をしているなど小規模飲食店は免税事業者の場合もあるでしょう。接待交際費に計上するため領収書を希望する顧客に対し、インボイス対応していない領収書では、顧客の会社が仕入税額控除を受けることができなくなります

飲食店が免税事業者=インボイス非対応であれば、顧客の会社は仕入税額控除を受けられなくなるため、接待に利用してもらえなくなる可能性はありますが、消費税の負担は小規模事業者にとって小さくないため、難しい選択を迫られるかもしれません。

インボイス制度と飲食店 仕入税額控除に及ぼす影響とは:まとめ

ここでは、2022年12月時点での情報を紹介しましたが、消費税の免税事業者が課税事業者へ切り替えた場合に、3年間の消費税の納税額を売上税額の2割に軽減する措置を盛り込む案が報道されています。 このようにまだ確定していない部分がありますので、今後も報道や国税庁の最新情報をチェックしながら、インボイス制度対応策を進めてください。

経理処理は法改正ごとに複雑になっていきます。今後、経理だけでなくオーダーや決済など、飲食店経営全般において電子化・システム化を進め、メニュー開発やサービスに注力できる環境を整えていくことが必要となっていくでしょう。

国税庁
インボイス制度の概要(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm)
適格請求書等保存方式の概要(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf)
仕入税額控除の対象となるもの(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6451.htm)
を加工して作成

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