飲食店お役立ちコラム

2023.01.10

食料・食品

飲食店も知っておきたい「食物アレルギー」

食物アレルギー

食物アレルギーとは、特定の食物を摂取することで、免疫システムが過剰な反応を引き起こすことです。食物アレルギーの患者数は増加傾向にあり、加工食品にはアレルギー表示が義務付けられています。
飲食店等には表示が義務付けられていませんが、中にはアナフィラキシーという重い症状があらわれることもあり、飲食店も食物アレルギーについて知っておくことが必要です。
この記事では、食物アレルギーについて解説していきます。

食物アレルギーとは?

摂取した食物が原因となり、免疫システムが体を守るために過剰な反応を起こすことにによる、じん麻疹・湿疹・下痢・咳などの症状が起こることを食物アレルギーといいます。

アレルギーは「過敏症」と訳されますが免疫反応の一つでありわれわれの体にとっての異物を排出するための一つのメカニズムです。したがって我々がアレルギーを起こす対象は主に人間以外の動植物由来の蛋白質がほとんどです。

食物アレルギーのメカニズム

即時型アレルギー反応

生体内の蛋白質が介在して起こるもので食物アレルギーの多くはこのタイプです。個人個人の免疫の反応の違いが、卵のアレルギーを持つ人、牛乳のアレルギーを持つ人を決める要因の一つになります。

食物アレルギーでは摂取した食物が抗原性を残したまま腸から吸収された後、血液を介して皮膚・気管支粘膜・鼻粘膜・結膜などに到達してアレルギー反応が起きます。即時型の場合には食物を摂取した直後から2時間以内ぐらいにアレルギー反応を認めることがほとんどです。

非即時型(あるいは遅発型、遅延型)アレルギー反応

詳細なメカニズムはまだ解明されておらず議論の多いところですが、T細胞というリンパ球による反応ではないかと考えられています。即時型と異なり食物を摂
取してから数時間後に湿疹・掻痒などの皮膚症状が主に認められます。

アレルゲンについて(アレルギーの原因となる抗原)

食物アレルギーは小児から成人まで認められますが、その大部分は乳児期に発症し、小児期に年齢ともに寛解していくケースが殆どを占めます。小児型の食物アレルギーは、年齢別では1才前後に最も多く認められ抗原としては卵・牛乳・小麦・大豆が主要アレルゲンです。

小児型は、大部分の症例で年月の差はあっても自然に良くなっていきます。すなわち、1才時に食物アレルギーと診断されてもそのうちの9割の人は遅くとも小学校入学時までには自然寛解すると考えられています。残りの1割の方の中には一生卵が食べられない・牛乳が飲めないという人もいます。

それに対して成人型食物アレルギーでは、魚類・エビ・カニ・果物などが多く、耐性を獲得していくことが少ないと考えられています。その中間に位置するのがピーナッツ・そば・ゴマなどであり耐性の獲得はされにくいと考えられています。

特定原材料等は28品目

これまでの実態調査等を基に、過去に一定の頻度で血圧低下、呼吸困難又は意識障害等の重篤な健康危害が見られた症例から、その際に食した食品の中で明らかに特定された原材料について、アレルギー物質を含む「特定原材料等」として指定しています。

現在、特定原材料等は28品目です。

特定原材料(義務表示)【7品目】

特に発症数、重篤度から勘案して表示する必要性の高いもの。
えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)

特定原材料に準ずるもの(推奨表示)【21品目】

症例数や重篤な症状を呈する者の数が継続して相当数みられるが、特定原材料に比べると少ないもの。特定原材料とするか否かについては、今後、引き続き調査を行うことが必要。
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

食物アレルギーの原因物質は、時代の変化とともに変わっていく可能性があると考えられるので、定期的に実態調査などを行い、新たな知見や報告により、見直しが行われています。

飲食店も知っておきたい「食物アレルギー」:まとめ

飲食店などの外食については、現在アレルゲン情報の提供は義務付けられていません。
消費者庁の外食等におけるアレルゲン情報の提供の在り方検討会では、「アレルギー表示が義務付けられ正確な表示がなされれば、患者にとって選択肢が広がると考えられる一方、外食等の業態の特性を踏まえると、全ての外食等事業者が対応可能な形で、正確な表示が担保されることは困難と考えられることから、表示の義務化については慎重に考える必要がある。」とした上で、「外食等事業者が正しい知識・理解に基づく、事業者の規模・業態等に応じた、アレルゲン情報の自主的な情報提供の促進を進めていく必要がある。」とされています。

最近では、メニューの食物アレルギー情報を公開している外食チェーンもあるようです。
飲食店が完璧にアレルギー対策を行うのは難しいですが、食物アレルギーについての正しい知識だけは持っておくことが求められるでしょう。

厚生労働省:食物アレルギーとは
(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf)
消費者庁:食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書令和4年3月
(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_220601_01.pdf)
を加工して作成

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