飲食店お役立ちコラム

2021.04.9

集客

テラス席を設置するチャンス! 道路占用許可基準の緩和措置が延長に

テラス席

気候の良い春先から初秋にかけて、屋外で飲食が楽しめるテラス席は集客が期待できる施設・設備のひとつです。特に、新型コロナウイルス感染症の影響で、減らした店内の席数の補完や、「3密」を回避する意味でも、テラス席の設置は有効でしょう。しかし、日本の都市部の場合、敷地に余裕がないことや道路法の規制もあって、設置が難しい部分がありました。

しかし昨年6月、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける飲食店などを支援する緊急措置として、国土交通省が路上利用の許可基準を緩和。これにより、道路沿いの飲食店が路上でテイクアウト販売を行ったり、新たにテラス席を設けて飲食を提供することが可能になりました。期限も、当初の予定から令和3年9月30日までに再延長され、さらに、「歩行者利便増進道路」、通称「ほこみち」制度を設け、飲食店等の路上利用を継続させる動きも。

そこで、どのような環境ならテラス席を設置することができるのか、条件を確認してみたいと思います。

テラス席の設置が可能?道路占用許可基準の緩和措置とは

道路上に椅子やテーブルを設置し、テラス席のようにして継続的に道路を占有する際は、自治体等の道路管理者による「道路占用許可」および、警察による「道路使用許可」が必要で、設置するものによって占有料の単価や設置基準が決められています。

しかし、今回の緩和措置では、いくつかの要件を満たせば、暫定的な営業による仮設の設置が認められ、かつ占用料も免除されます。本来は、手間のかかる自治体や警察との協議・許可申請なども柔軟に進めることができる点は大きなメリットではないでしょうか。

どんな道路ならテラス席がOKになる?

テラス席、テイクアウト販売の設置が可能な道路や、設置する施設についてはいくつかの条件があります。

場所について

道路の構造や交通に著しい支障を及ぼさない場所であることを前提に、以下のような要件があります。

  • 車道以外の道路の部分で、人や車の往来が激しくないこと
  • 道路の交差点や接続点、曲がり角でないこと
  • 点字ブロックとの間に十分な距離が確保されていること
  • 歩道の場合、交通量が多い場所では3.5m以上、それ以外の場所では2m以上の歩行のための空間を確保すること

施設について

道路の構造に影響を及ぼさないことを前提に、以下のような要件があります。

  • 倒壊や落下、必要以上に燃えやすいものや爆発の可能性があるもの、悪臭や騒音を発生させないものであ ること
  • 設置場所は自店舗の前のみとし、必要上の規模になっていないこと
  • 色やデザインが脇見運転などを引き起こさないこと
  • ドライバーが歩行者や標識を見つけるのを妨げないこと
  • 周辺の美観・景観を損ねないこと

期間について

現状の緩和措置では、令和3年9月30日までです。

その他の条件

  • 迂回路や駐車場等の交通案内を行うこと。
  • 沿道飲食店等の路上利用により多数の来客が見込まれる場合は、十分な駐車場等を確保すること。
  • 沿道飲食店等の路上利用の終了後は、道路の清掃を行い、原状回復すること。
  • その他道路管理者が必要と認める事項。

申請前に確認しておきたい注意事項

期間限定でもいいから、ぜひテラス席を設置したいという飲食店の方は、次の注意点にも留意しましょう。

注意点1. 飲食店単独の申請は不可

今回の申請は、飲食店単独のものは受け付けていません。
占用許可を得たいと考えている飲食店を、地方自治体や道路協力団体、都市再生推進法人、地元の商店街振興組合などが取りまとめ、営業時間などを決めたうえで、国や都道府県などの道路管理者に対して一括して申請することになります。これらの団体と連携・協力するか、そういった団体がない場合は、自治体の道路関係部署に相談してみましょう。

注意点2. 清掃等の協力で占用料免除

占用料が免除される要件としては、道路の維持管理に協力することとあり、施設付近などの清掃や除草、植栽の選定などの必要があります。

注意点3. 保健所への対応も忘れずに

本来、テラス席を含め、屋外席の設置ルールについては、各自治体の保健所で定められており、設置の際は事前に「屋外客席設置届」の提出が必要です。これには、屋外客席の設置は店内客席数を上回らないという条件があります。

例えば、店内客席が30席であれば、屋外には最大30席しか設置できません。また、給仕の方法などは、保健所や道路管理者、警察との協議で確認する必要があります。

注意点4. 緩和措置終了後の対策も

今回は、緊急措置として「暫定的な営業」と「仮設」が認められるだけですので、緩和措置終了後に原状回復する必要があります。その際の撤去費用や、継続して設置を希望する場合は、その方法なども検討しておくとよいでしょう。

「ほこみち」制度とは?

テラス席を利用して街の活性化を

オープンカフェやベンチ、テラス席などを設けた憩いの空間づくりは、街の活性化にも繋がるとして、近年、道路への新たなニーズは高まっています。

さらに、今回の道路占用許可基準の緊急緩和措置を実施した結果、1月19日現在で、全国の約150の自治体で特例措置の適用事例があり、占用許可件数は全国で約360件に上りました。また、そのうちの約6割の事例が、引き続きテラス席営業などを希望しています。

こうした状況もあり、令和2年11月25日、「道路空間の構築を行いやすくすること」を目的に道路法等が改正され、新たに「歩行者利便増進道路」(通称:ほこみち)制度が創設されました。

新たに設けられた「ほこみち」制度では、賑わいのある道路空間を構築するための道路を、道路管理者(国や都道府県など)が指定することができるようになります。

歩行者利便増進道路「ほこみち」に指定されると、次のようなメリットがあります。

構造基準に関するメリット

歩道の中に、道路管理者が“歩行者の利便増進を図る空間”を定めることができます。 例えば、道路を4車線から2車線に変更し、広げた歩道部分にテラス席を設けるといったことが可能になります。また、こうした空間活用について、関係者との調整もスムーズになると考えられます。

空間活用に関するメリット

特例区域を定めることで、道路空間を活用する際に必要となる道路占用許可が柔軟に認められます。 道路占有許可が柔軟に認められるようになると、占用物件を置く場合の、“無余地性”と呼ばれる基準が除外されます。

※無余地性=道路区域外にその占用物を置く余地がなく、やむを得ない場合のみ占用を許可する、という基準。 道路空間を活用する者(=占用者)を公募により選定することが可能になります。

この場合には、最長 20 年の占用が可能となります(通常は5年)。公募しないことも可能です。

ちなみに、令和3年2月には、全国で初めて御堂筋(大阪市)、三宮中央通り(神戸市)及び大手前通り(姫路市)が歩行者利便増進道路(通称:ほこみち)に指定されています。この動きは、さらに加速すると考えられます。

テラス席を設置するチャンス : まとめ

緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルス感染症への対応は、今後も飲食店経営のカギになると考えられます。路上空間を活用したテラス席の設置やテイクアウト販売は、「3密」の回避だけでなく、集客にも有効で、ひいては街の活性化にも繋がります

テラス席からお客様のスマートフォンで注文ができるセルフオーダーシステムなど便利なサービスもありますので、緩和措置が利用できるこの機会に、「ほこみち」制度も視野に入れながら、トライしてみるのもいいかもしれません。

国土交通省:テイクアウトやテラス営業などのための道路占用許可基準の緩和措置(https://www.mlit.go.jp/road/senyo/covid/01.pdf)
国土交通省:特例措置を活用した沿道飲食店等の路上利用に係る道路占用許可の確認事項(https://www.mlit.go.jp/road/senyo/pdf/11.pdf)を加工して作成。

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