飲食店お役立ちコラム

2022.08.22

経営

【職業能力評価基準を活用】今ある人材を育成しよう

外食産業の人材育成

飲食業界は人手不足の状態が続き、離職率も高くなっています。まずは「職業能力評価基準」に基づき、今ある人材の能力を正しく評価し育成することで、スタッフのモチベーションを高め、スキルを一層強化していくことが重要です。
この記事では、厚生労働省「外食産業の人材育成のために」より、キャリアマップ、職業能力評価シート導入・活用マニュアルの要点をまとめて紹介します。

職業能力評価基準とは

「職業能力評価基準」とは、仕事をこなすために必要な知識・技術・技能に加えて、成果につながる職務行動例(職務遂行能力)を、業種別、職種・職務別に整理した、公的な職業能力の評価基準です。採用や人材育成、人事評価など、様々な場面で活用できます。

職業能力評価基準を活用した人材育成の進め方

職業能力評価基準 1.課題の明確化と活用するツール

最初に、現時点の課題や問題点がどこにあるのか明確にすることから始めます。課題をはっきりさせてから、打ち手を考えることが大切です。課題が明確になったら、具体的にどんなツールを使うのか考えます。

《ツール1》キャリアマップ

キャリアマップとは、職業能力評価基準で設定されているレベル1~4をもとに、本業種の代表的な職種における能力開発の標準的な道筋を示したものです。キャリアマップでは、①キャリアの道筋と②各レベルの習熟の目安となる年数が一目で分かるようになっています。

外食産業の従業員の大半は店舗で働いています。キャリアマップでは、店舗スタッフや店長、エリアマネジャー等の「店舗・営業系」を中心に据えつつ、「事務・管理系」「企画系」などの道筋も併記し、本人の能力や適性に応じて様々なキャリアがありうることを示しています。

■キャリアマップ

■レベル区分の目安

《ツール2》職業能力評価シート

職業能力評価シートとは、「職業能力評価基準」で職種・職務・レベル別に定められている「職務遂行のための基準」を簡略化したものであり、人材育成に有効な示唆を得ることができるチェック形式の評価シートです。 これを使うと、「自分(または部下)の能力レベルはどの程度なのか」「次のレベルに上がるには何が不足しているのか」を具体的に把握することができます。外食産業の職業能力評価シートは、以下の通り整備されています。

■職業能力評価シートの種類

■職業能力評価シートの構成

職業能力評価シート、職業能力評価基準は厚生労働省ホームページにて閲覧・ダウンロードできます。

職業能力評価シートについて
職業能力評価シート(外食産業)のダウンロード

職業能力評価基準2. ツールの導入準備

使用するツールを決めたら、ツールをそのまま使うこともできますが、それが現場の従業員にとって分かりやすいものであるか確認します。例えば、普段使わない言葉などがある場合は、自社の言葉に置き換えたりすると、現場でも使いやすくなります。

 ツールの導入準備

職業能力評価シートの修正方法

全てのポイントにつ いて修正を行う必要はありませんので、「従業員にとって分かりやすくするためには」という視点で、 必要な修正を行います。

職業能力評価基準3. ツールの導入と人材育成施策への展開

《テーマ1》企業・職場の人材レベルの把握

ツールを人材育成に活用していきましょう。ツールを人材育成に活用する時、それが「課題に応じた取り組み」でなければなりません。

取り組みの進め方とポイント

■STEP:1 対象従業員の個人別スキルの把握

チェックの対象となる従業員を選定し、それぞれにチェックしてもらう職業能力評価シートを決定します。使うシートが決まったら、従業員にシートを配布します。

従業員本人のチェックが終わったら、上司にもチェックしてもらいます。その後、上司チェックの結果を本人に返却し、本人が上司のチェック結果との差を把握した上で、面談を行います。この面談で、本人と上司の結果にズレがある部分についてはお互いに確認し、必要であれば上司の結果を修正します。

■STEP:2 個人別のチェック結果の集計

職業能力評価シートのチェックが終わったら、各人のチェック結果を集計します。この時、平均点を計算する場合は、「-」の取扱いに注意しましょう。自社の業務として存在しないという項目であれば、除外して計算しても問題ありません。

■STEP:3 重点的に強化すべきポイントの明確化と人材育成施策への展開

集計結果をもとに、「点数が著しく低いレベル」や「特に点数が低い項目」などがないか確認します。 強化すべきポイントが見つかったら、その原因を分析した上で、教育計画や採用計画の策定に活用しましょう。

《テーマ2》階層別の人材育成

職業能力評価シート等を使用して知識・スキルの習得状況をチェックすることで、従業員一人ひとりの強みと弱みを明らかにし、上司による育成計画や本人の取り組み目標を設定したり、階層毎の育成施策に役立てましょう。

取り組みの進め方とポイント

■STEP:1 知識・スキルの強み・弱みの把握

職業能力評価シートを使って、対象とする階層一人ひとりの知識・スキルの強み・弱みを把握します。

■STEP:2 人材育成施策の検討

一人ひとりの知識・スキルの強み・弱みをもとに、これまで行ってきた人材育成施策(研修や OJT など)の見直しや新たな人材育成施策の検討を行います。

人材育成施策の検討イメージ

OJTコミュニケーションシートの活用

人材育成の取り組みをより効果的なものとするために、実施した人材育成施策の効果測定を行い、必要な見直しを講じます。効果測定に際しては、「OJT コミュニケーションシート」を活用して上司・部下で面談を実施し、「上手くいったこと/いかなかったこと」などを確認し合い、継続的な取り組みに繋げることが重要です。

活用マニュアルでは、この次に能力チェックの高度化や、中途採用についても解説されていますので、詳しく知りたい場合は以下をご覧ください。

厚生労働省「外食産業の人材育成のために」

【 職業能力評価基準を活用】今ある人材を育成しよう:まとめ

職業能力評価シートのようなツールがあれば、スタッフにとっても、自分の能力レベルがどの段階まで到達していて、更にレベルアップするためには何が不足しているかが明らかになり、モチベーションの喚起につながります。

取り組み企業の声では、職業能力評価シートを活用してスキルチェックを行うことにはそれほど手間はかからず、日々の忙しい店舗運営の中でも十分実施可能との意見があります。今ある貴重な人材をしっかり育成し、長く勤務してもらうために、職業能力評価基準を活用してみてはいかがでしょうか。

 

厚生労働省:外食産業の人材育成のために(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000093810.pdf)を加工して作成

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