飲食店お役立ちコラム

2021.08.6

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増え続ける需要「ヴィーガン料理」で新しい取り組みを

ヴィーガン料理

ヴィーガンという言葉を聞いたことがありますか?
ヴィーガンとは、「人間ができる限り動物を搾取することなく生きるべきであるという主義」を持つ完全菜食主義者をいいます。ビル・ゲイツをはじめとした多くの著名人がヴィーガンビジネスに巨額の出資を行い、日本でも美容や健康意識の高い人だけでなく、地球環境問題などにも関心が高い人たちに注目されはじめています。

日本を訪れるベジタリアン・ヴィーガンの外国人旅行者は年間145~190万人、その飲食費は450~600億円と推計されます(2018年推計数値)。一方、外国人ベジタリアン・ヴィーガンを対象にアンケート調査を実施したところ、日本の飲食店等の対応は不十分という意見が多数集まりました。

来たるアフターコロナに向けて、新しい取り組みを考えている飲食店も多いと思いますが、この記事では、新しいメニュー開発のヒントとしてヴィーガン料理の需要について解説していきます。

ヴィーガンの基礎知識

ヴィーガンは知らなくても、ベジタリアンについては、多くの人が知っていると答えるでしょう。しかし、ベジタリアンの語源はベジタブルではなく、ラテン語のvegetusには「活発な、力強い」という言葉が語源ということを知っている人は少ないのではないでしょうか。

つまり、ベジタリアンとは「健康で生き生きとして力強い人」のことを指します。健康維持だけでなく、宗教の信条、動物愛護、環境保護など様々な背景や目的があり、複数の類型があります。

ベジタリアン等の背景と分類

上記の表を見てわかるように、ヴィーガンはベジタリアンの類型のひとつということになりますが、近年は特にヴィーガンが注目されています。日本では、あまり話題に上っていませんが、主要100ヶ国・地域におけるベジタリアン等の人口は、欧米諸国を中心に毎年約1%近くの増加傾向にあり、2018年には約6.3億人にも達しているほどです。

試算では、訪日ベジタリアン等旅行者は145~190万人/年程度、飲食費は約450-600億円/年程度の規模と推計されます。今後ますます増えていくことが予想され、観光におけるベジタリアン等への対応は重要なポイントと言えます。

日本におけるヴィーガン料理対応の現状と課題

観光庁が実施した外国人ベジタリアン・ヴィーガンへのアンケート調査では、

  • 日本はベジタリアン・ヴィーガンに対応した飲食店等の数が少ない
  • ネットでの情報発信や店舗内外での表示が少なく、飲食店がベジタリアン・ヴィーガンに対応しているかどうか分からない
  • 日本で食べたかった食べ物のベジタリアンオプションがなく、食べることを諦めた

など、日本の飲食店等の対応は不十分という意見が多数集まりました。調査を通じて、多くの日本の飲食店等において、基礎知識が不足しているために対応方法が分からないということが明らかになっています。

飲食事業におけるヴィーガン料理

アンケート調査を踏まえ、観光庁では令和2年4月ベジタリアン・ヴィーガンの受入環境整備を推進するためのツールとして、先進事例も交え「飲食店等における外国人ベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド」を作成しています。

ヴィーガン料理は、いわゆる動物性タンパク質を一切取りません。ただ、代替品としてベジミート、大豆ミート、フェイクミートとも呼ばれるものがが大きな話題になっており、2025年に40億円規模になると予想されています。すでに日本でもイオンとセブン&アイホールディングス2社の精肉売場に登場しています。

飲食店で提供する料理に、肉・魚・卵等を一切使わないというのはどんなメニューなのでしょうか。実際の飲食店の取組事例を見ていきたいと思います。

事例1:ヴィーガン料理専門店

  • 2011年オープン
  • 4店舗展開/約70%が外国人/欧米系とアジア系で約半々
  • メニューは全てヴィーガン対応

メニュー例

  • 3種類のたんたん麺(金ごま、黒ごま、白ごま)及び2種類のベジらーめん(とんこつ風、醤油)をメインに展開
  • サイドではソイミートの甘酢唐揚げ、ソイミートの焼き餃子、ミニ牛丼、ミニ麻婆豆腐丼、小松菜のおひたしなどを提供
  • デザートには醗酵お米のアイスを提供

ヴィーガン対応への魅力・意義

代表的な日本食と言えばラーメン、お寿司などが挙がるのはベジタリアン等でも同じ。それだけ需要の多いものをヴィーガン対応で提供し、喜んで貰うことが醍醐味。また、「ベジらーめん・とんこつ風」もあり、動物性のイメージが強いラーメンを、全て野菜や大豆などで作るという作り手の面白さもある。

これからヴィーガン料理に取り組む飲食事業者等へのアドバイス

日本の代表的な食事をシンプルに美味しく提供することが大事なのではないか。

事例2:ヴィーガン料理専門店

  • 2009年オープン
  • 5店舗展開/全店舗で見ると約半数が外国人
  • ヴィーガン料理(スイーツ含む)

メニュー例

  • 天上のヴィーガンパンケーキ(Heavenly Vegan Pancakes with Salad)
  • キノコのハヤシライス (Mushroom Hayashi-Rice)

ヴィーガン対応への魅力・意義

現在、ヴィーガン対応の料理を提供している飲食店は少なく、外食できる場所が少なくて困っているヴィーガンの方々が、喜ぶ姿を見られる。
ヴィーガン対応により使用できる食材や調味料が限定される中で、組み合わせ方などを工夫してメニューを開発する面白さがある。

これからヴィーガン料理に取り組む飲食事業者等へのアドバイス

例えばカゴメ株式会社のように、ベジタリアン等対応の食材の製造、販売に積極的な食品メーカーも存在するので、まずはそのような加工食品を活用してメニューを考案するのが良いのではないか。

事例3:ヴィーガン料理を提供する野菜カフェ

  • 2014年オープン
  • 全体の約5%がヴィーガン
  • メニューをヴィーガンと非ヴィーガンに二分、メインとサイド共に豊富なメニューを提供

メニュー例

  • ヴィーガンメニューは全体の約半分を占め、タコライスやロコモコ、アボカドバーガーやグリーンカレーなどを提供
  • 非ヴィーガンメニューはサラダとパワープロテインメニューが中心

ヴィーガン対応への魅力・意義

  • 外国人のヴィーガンのお客様は、積極的に我々に対してコミュニケーションを取ってくれるので、対応の手ごたえを直接感じられる。
  • 対応開始当初は数品程度だったメニューも、今となっては倍以上の数を提供。海外の専門店視察やSNSの傾向分析などによってトレンドを把握し、シェフを集めてメニュー開発を行うことに醍醐味を感じている。

これからヴィーガン料理に取り組む飲食事業者等へのアドバイス

ヴィーガン料理の中心となる野菜は、気候変動などの外的要因により価格の変動が大きいため、比較的コストが安定する非ヴィーガン料理も提供し、ヴィーガンでないリピーターも獲得することで、収益を安定化させるなどの対策が有効。

「ヴィーガン料理」で新しい取り組みを:まとめ

現在の環境や健康への関心の高まりを見ると、ヴィーガン料理は一部の菜食主義者のものとではないということがわかってきました。

特に、上記事例3については、「美と健康は食事から」をコンセプトに、オシャレな見た目と野菜をたっぷり使った体に優しい料理が話題。インバウンドだけでなく、美容や健康意識の高い人に向けたヴィーガン料理という明確なターゲットが設定されています。

アフターコロナを見据え、日本ではまだ注目され始めたばかりのヴィーガン料理に、いち早く取り組んでみるのもひとつの選択肢かもしれません。

観光庁:飲食事業者等における ベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001335459.pdf)を加工して作成

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