飲食店お役立ちコラム

2026.05.4

経営

データが語る外食産業の転換点|2024年〜2025年上期の動きを解説

FBI

食材費の高騰や深刻な人手不足、消費者の行動変化など、外食産業を取り巻く環境は絶えず変化を続けています。店舗の利益率を確保し、持続的な成長を目指す上で、過去のデータと最新のトレンドを比較・分析し、市場が今どのようなフェーズにあるのかを客観的に把握することは極めて重要です。

この記事では、生活に身近な飲食料品に関連する「食料品工業」「食料品流通業」「飲食店、飲食サービス業」の3つの業種の活動状況を総合的に試算した経済指標である「フード・ビジネス・インデックス(FBI)」をもとに、外食産業の現在地を確認していきます。2024年までの市場と、直近の2025年上期の最新状況を比較し、今後の店舗運営や経営戦略のヒントとなる情報を紹介します。

1. 2024年までの「連続上昇」から、2025年は「低下」への転換点へ

フード・ビジネス・インデックス全体を通してみると、2025年は外食産業において明確な「潮目の変化」が表れています。
まず、2024年の動きを振り返ってみましょう。2024年は、前年と比較して回復の勢いこそ落ち着いたものの、「飲食店、飲食サービス業」が全体を力強く牽引したことにより、フード・ビジネス全体では緩やかな回復基調が続いていました。

しかし、2025年に入ると状況は一変します。2025年第1四半期(1〜3月)は前期比0.4%の上昇(指数値95.5)と辛うじてプラスを維持したものの、続く第2四半期(4〜6月)は一転して同2.0%の大幅な低下(指数値93.6)へと転じました。
この変化の要因は、指数を構成する内訳を見ると明らかです。全体を牽引していたはずの「飲食店、飲食サービス業」は、第1四半期には前期比3.6%上昇という好調な滑り出しを見せましたが、第2四半期には同1.6%の低下に沈んでいます。

また、第1四半期のインデックス全体に対して0.8%ポイントの上昇寄与を見せたのも「飲食店、飲食サービス業」でしたが、第2四半期の下落に最も影響を与えたのは後述する「食料品工業」でした。 これまで外食産業全体を包んでいた「上昇トレンド」は一旦落ち着きを見せ、今後は純粋な店舗の実力や、外部環境の変化にいかに対応できるかが問われる、よりシビアなフェーズに移行したと考えられます。

【フード・ビジネス・インデックス(FBI)全体の四半期毎の推移と3業種の影響度合い】

2. 「パブレストラン・居酒屋」の乱高下と「カフェ・レストラン」の安定感

パブレストラン・居酒屋の動向

過去のデータ分析において、パブレストラン・居酒屋業態は第1四半期に大きく上昇したのち、第2四半期に大幅な低下に転じるという、激しい乱高下を見せました。この傾向は2025年になっても同じ波を描いています。
2025年第1四半期は「飲食店、飲食サービス業」全体の上昇に対して2.5%ポイントものプラス寄与を見せ、業界全体を力強く押し上げました。 しかし、第2四半期には一転して2.3%ポイントのマイナス寄与となり、今度は全体数値を大きく引き下げる要因となってしまったのです。

カフェ・レストランの動向

一方で、他業態の変動に左右されず、底堅い推移を見せているのが「喫茶店(カフェ)」や「食堂、レストラン、専門店」といった業態です。過去のデータでも、これらの業態は第1四半期・第2四半期と連続して上昇し続けるという手堅さを見せていました。 そして2025年においても、「喫茶店」は第1・第2四半期連続で安定した上昇を記録しています。さらに「食堂、レストラン、専門店」も、第1四半期は横ばいで耐え忍び、第2四半期には見事上昇に転じています。

パブレストラン・居酒屋の急激な上下動は、外出機会の変動などにより、消費者の嗜好や行動の変化が影響したと考えられます。アルコールをメインとする業態であっても、食事メニューの専門性を高めたり、昼間の時間帯を活用したカフェ営業を取り入れるなど、「明確な目的来店」を促す安定業態の要素を戦略的に取り入れることが、今後の売上のにつながると言えるでしょう。

【「飲食店、飲食サービス業」の内訳系列の推移と影響度合い】

3. 「酒類・食材の高騰」がダイレクトに数字に表れた2025年第2四半期

以前より飲食業界の懸念材料として、光熱費や材料費の絶え間ない高騰が指摘されていましたが、2025年はこの懸念が現実の数字として大きく表れ、経営に直結する問題となっています。

2025年第2四半期のインデックス全体を大きく引き下げた最大の要因は、実のところ「食料品工業」による1.2%ポイントの低下寄与でした。「食料品工業」自体、第1四半期は前期比0.5%の上昇でしたが、第2四半期は同3.1%の大幅な低下となっています。特にその内訳を見ると、飲食店の仕入れに直結する「酒類」の動きが顕著です。「酒類」は第1四半期に大幅上昇し、食料品工業全体に対して1.5%ポイントの上昇寄与をもたらしました。

しかし第2四半期には大幅低下し、4.0%ポイントもの低下寄与となっています。これは、2025年4月に大手酒類メーカーが一斉に行った価格改定(値上げ)による駆け込み需要と、その後の反動減がダイレクトに影響した結果です。
その他の品目を見ても、「調味料等」が第1四半期の上昇から第2四半期にはわずかな低下に転じるなど、仕入れコストの圧迫が続く厳しい状況が浮き彫りになっています。

一方で、「パン・菓子」「清涼飲料」「農・畜・水産加工食品」は第1四半期に低下したものの第2四半期は上昇に転じ、さらに「麺類」は第1・第2四半期と連続して安定した上昇を見せるなど、品目によって動きに大きなばらつきがあります。特定の食材だけに依存せず、市場のコスト変動を素早く見極め、臨機応変にメニューを組み替える柔軟な対応力が不可欠になっています。

【「食料品工業」の内訳系列の推移と影響度合い(寄与度)】

4. データから導く今後の外食産業に向けた具体策

2024年までの全体的な上昇トレンドから現在の変化、そしてコスト圧迫の現状を踏まえると、今後の外食産業に求められるのは、特別な打ち手というよりも、すでに多くの店舗で取り組まれている基本施策を、いかに継続的かつ高い精度で実行していくかだと言えます。 すでに対策している店舗も多いと思いますが、改めてデータの動きから見ても、以下のような取り組みを地道に積み重ねていくことが重要になります。

市場の変動に対応する柔軟性とデジタル化の検討

慢性的な人材不足や、光熱費・食材費の高騰に対応するためには、テクノロジーを活用したデジタル化が引き続き重要です。注文業務などを効率化するセルフオーダーシステムモバイルオーダーの導入、予約管理や在庫管理の効率化などは、すでに多くの居酒屋や飲食店で当たり前のように進められている施策です。

ただし、こうした取り組みは「導入して終わり」ではなく、実際にスタッフの業務負担をどれだけ軽減できているか、接客の質や回転率の改善につながっているかを見直し続けることが大切です。 効率化によって生まれた人材リソースを、より丁寧な接客や顧客満足度の向上、新しい顧客体験の創出に振り向けることで、単なる省力化にとどまらない付加価値づくりにつなげることができます。

アルコール需要に依存しない「新たな価値」の開拓

酒類の仕入れ価格高騰が顕著になる中、パブレストラン・居酒屋業態の不安定な需要をカバーするためには、アルコール以外の売上づくりも引き続き重要です。
これもすでに多くの店舗で意識されていることですが、お酒を飲まない層への対応や、食事利用・早い時間帯の需要開拓などは、今後さらに欠かせない視点になります。

「喫茶店」や「専門店」が安定した推移を見せていることからも分かる通り、現代の消費者は、単に飲食をするだけでなく、その店ならではの食体験や居心地のよさを求めています。
ノンアルコールドリンクの充実、食事だけでも満足できるメニューづくり、昼飲みや早時間帯の利用促進、宴会以外の少人数利用への対応など、当たり前に見える施策を丁寧に磨き続けることが、安定的な売上につながると考えられます。

データが語る外食産業の転換点:まとめ

2024年まで続いた連続上昇の波は落ち着きを見せ、2025年は第1四半期の上昇から第2四半期には低下に転じるなど、外食産業は大きな転換点を迎えています。いかに外部環境の変化(コスト高騰や消費者行動の多様化)に柔軟かつ迅速に対応できるかが問われる局面です。

客観的なデータに基づいた戦略の見直しと、省力化・デジタル化などのテクノロジーの積極的な活用が、これからの外食産業を力強く生き抜くための武器となるでしょう。

出典 経済産業省:飲食関連産業の動向(FBI 2025年上期)(https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/archive/kako/20260210_1.html)を加工して作成

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