飲食店お役立ちコラム

2021.11.15

経営

【飲食店のM&A】廃業を決める前に相談を

飲食店のM&A

帝国データバンクの調べでは、2020 年における飲食店事業者の倒産が 780 件と、過去最多の水準となったとのこと。新型コロナウイルス感染症の影響だけでなく、集客や人手不足など経営の難しさや後継者不在などの事情などから、廃業を考えるケースもあるでしょう。

その場合、廃業ではなくM&Aという選択肢があります。M&Aというと、大企業の合併・買収の印象が強いかもしれませんが、実際には中小企業の経営問題を解決するために多く使われている手段です。

廃業を決める前に、M&Aを考えてみるのもひとつです。この記事では、飲食店のM&Aについて、また無料相談ができる国の機関紹介していきます。

飲食店のM&Aとは

M&Aとは、Mergers(合併)&Acquisition(買収)の略語で、企業の合併や買収などの行為を指し、広い意味では業務提携や資本提携も含まれます。ここ数年の少子高齢化による国内市場の縮小、新型コロナウイルスの影響も相まって、廃業を選ぶ経営者が増加傾向にあることから、M&Aに注目が集まっています。

M&Aにより信頼できる企業へ自分の事業を引き継ぐことで、人材やノウハウなどの経営資源を無駄にすることなく事業を存続させることができます。

【飲食店のM&A】売り手側のメリット

親族に後継者がいなくても事業承継が可能

事業承継とは経営を後継者に引き継ぐこと。経営者の親族に事業を引き継ぐイメージがありますが、後継者がいない場合は第三者への譲渡(売却)も有り得ます。第三者との売買取引となる場合が「M&Aによる事業承継」となります。

親族に後継者がいなくても、長年育ててきた事業を廃業せずに事業承継をすることが可能。経営状態の良い飲食店の場合なら、M&Aによって創業者利益を得ることもあります。

かつては「親族内承継」がほとんどでしたが、近年では後継者確保が困難になっており、親族外の役員や従業員を後継者にする親族外承継、社外の第三者に会社や事業を譲渡するM&Aの割合が増えています。

従業員の雇用

飲食店を廃業すると、従業員は失業してしまいます。その点、M&Aの場合は、買収する側が従業員の雇用を継続する場合が多く、従業員はそのまま働き続けることができます。

【飲食店のM&A】買い手側のメリット

異業種参入が容易

すでに実績のある飲食店をM&Aにより買収することで、飲食店経営のノウハウを持たなくても、異業種参入が容易です。

相乗効果

例えば飲食業と関連性の高い観光、宿泊、食品などの事業者であれば、既存事業に役立つ可能性があり、相乗効果が期待できます。また、すでに飲食店を経営している事業者であれば、M&Aによりスケールメリットが増加し、仕入れなどの合理化や知名度UPが期待できます。

廃業を考える飲食店の増加と同時に、M&Aによって有利に開業しようと考える人も増えています。飲食店のM&Aは、売却する側、買収する側どちらにもメリットがあると言えます。

飲食店のM&Aをサポートする補助金・無料相談

M&Aには、専門家に調査や手続きを依頼する必要があるため経費がかかりますが、M&Aをサポートする補助金・助成金があります。

例えば「経営資源引継ぎ補助金」は業績が悪化した中小企業の経営資源の引継ぎを促進するための補助金で、2021年の二次公募は終了となりましたが、事業承継が行われずに自主廃業ということになれば、雇用の消失など地域経済にとって大きなマイナスとなるため、事業承継を支援するための取り組みとして、地方自治体毎に補助金などの支援策が用意されています。

また政府の経営支援も本格化し、無料の経営相談所「よろず支援拠点」を、47都道府県に設置しました。中小企業・小規模事業者などのための相談所であり、コーディネーターと呼ばれる専門家が、経営上のあらゆる悩みの相談に対応しています。

よろず支援拠点について

よろず支援拠点では、M&Aだけでなく集客や資金繰りなどさまざまな経営課題について無料で相談することができます。よろず支援拠点のコーディネーターと呼ばれる専門家の経歴は、経営コンサルタントが最も多く、民間企業出身や、支援機関出身、金融機関出身、税理士などの専門家もおり、幅広い専門家が多様な相談に対応しています。

よろず支援拠点については、 相談対応件数、来訪相談者数ともに年々増加傾向で、令和2年度は432,640件の相談があり、毎年相談者の9割以上が対応について満足しているとの結果が出ているとのことです。

M&Aを考えていても、経営コンサルタントに相談するのはハードルが高いと思いますが、こういった機関であれば気軽に相談できるのではないでしょうか。

よろず支援拠点ウェブサイト https://yorozu.smrj.go.jp/

※よろず支援拠点 令和2年度 満足度調査(全国平均)より

【飲食店のM&A】廃業を決める前に相談を:まとめ

廃業でなくM&Aなら、長年培ってきたノウハウなど貴重な経営資源を残すことができます。
店舗経営が順調なのに後継者がいないという理由であればM&Aにより利益を得ることもありますが、飲食店は経営状況の悪化で売却するケースが多いようです。

あまりにも業績が著しく悪化している状況だと買い手が見つからない可能性が高いので、戦略的なM&Aを視野に、早い段階で専門家に相談したほうが良いでしょう。

参照・出典
よろず支援拠点による経営支援(中小企業庁)(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/shoukibodeta/html/b1_3_2_0.html)
帝国データバンク(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p210101.pdf)

最新記事

カテゴリー