2021.04.15
経営
HACCPの導入が完全義務化!飲食店の対応とは

2020年6月、改正食品衛生法の施行により飲食店のHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理制度化されました。1年間の猶予が設けられ、今年6月1日から導入・運用が完全義務化)されます。 HACCPとは、米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された食品の衛生管理の方式。Hazard Analysis Critical Control Pointの(危害要因分析重要管理点)を略してHACCPと呼びます。
これまでHACCPは、主に食品製造業の事業者に整備が進められてきた、安全で衛生的な食品を製造するための管理方法のひとつでした。 これを飲食店や販売店など小規模も含めた事業者にもHACCPの考え方を導入することによって、衛生管理が見える化され、より効果的な衛生管理を行うことができると考えられています。
完全義務化まで、あと1ヶ月半となりましたが、飲食店では具体的に何をすれば良いのでしょうか。ここでは厚生労働省「食品衛生管理の手引き」を元に確認していきたいと思います。
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HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理とは
衛生管理の見える化とは、これまでの手洗い、清掃、従業員の健康管理など一般衛生管理に関する取り組みと、メニューに応じた管理方法を定めた衛生管理計画を作成し、実行、記録・確認することです。
今取り組んでいる衛生管理と、メニューに応じた衛生管理の注意点(冷蔵する、加熱する)を明確にし、衛生管理計画を作成、それを実行、記録します。
【HACCPの衛生管理】すべてのメニューを「3分類」する
危険温度帯と3分類
細菌が付いた食品を10℃~ 60℃の温度帯(危険温度帯)に置いたままにすると、その細菌はどんどん増えていきます。食品原材料や調理品がどれだけ長くこの温度帯にとどまるか、通過するかで危険度が変わり管理のしかたも変わるのですが、たくさんあるメニューも微生物の目線に立つと、「加熱しない食品(食材)」「加熱してすぐ食べる食品(食材)」「加熱と冷却をくりかえす食品(食材)」の3グループに分かれるか、その組み合わせのいずれかとなります。
そのため、メニューをこの3つに分類(分解)するだけで、簡単に管理することができるのです。

微生物目線にたって「どの温度帯を通過するか」ということに着目し、あらゆるメニュー(食材)を3つに分類して管理するシンプルな方法です。これなら実践しやすいのではないでしょうか。
3つの分類毎の注意
これらの、グループ分けした食品を表にまとめてみましょう。グループごとに注意するポイントや予防策が決まっていますので、何をどの食品に「つけてはいけない」のか、また「増やしてはいけない」のかなど、どのように注意するのかが良く分かります。
グループ 1:加熱しない食品
加熱することがなく洗浄殺菌ができない食品が多いため、微生物がついてしまうと、そのままお客様の口に入ってしまう可能性が高くなります。グループ 2:加熱してすぐ提供する食品
加熱により微生物を死滅させて、すぐ食べてもらう食品なのでリスクは他のグループより少なくなります。でも油断はできません。加熱が不十分だと微生物が生き残ってしまう可能性があります。グループ 3:加熱と冷却をくりかえす食品
加熱で微生物を死滅させるのはグループ2と同様ですが、冷ましたり再加熱するという点が異なります。 冷却をする理由としては、加熱をしても死なない細菌がいるため。ゆっくり冷ますと生き残った細菌が爆発的に増えてしまうので、そうにならないためにグループ3の食品はなるべく早く冷却することがポイントとなります。【HACCPの衛生管理】重要な工程を正しく管理(計画と記録)
どうやって危害を防ぐのか、手順や基準を決める(計画)
危害を防ぐためにどのような手順や基準で調理をすればいいのかを決めておく事が、衛生管理上最も重要な工程となります。 例えば 85℃~ 90℃で 90 秒間中心部分を加熱すると安全が保てるという基準を作ったら、その条件になる調理方法を確認しましょう。条件になる調理方法:例
- コンロの火力を強火にし、決まったフライパンで○○分加熱すると必ず中心部は 90 秒間 85℃~ 90℃になる。
- 冷凍のコロッケを 30 個フライヤーに入れる時は温度を160℃に設定し、○○分揚げると基準値を達成できる。
- 加熱しないものなら、提供まで 30 分以上要する場合は、提供まで 10℃以下で保存する。
手順通りできているかをその場で確認できるように、オーブンの設定温度、フライヤーの設定温度、温度計の温度、タイマー等々、道具を使って判断の目安にすることがポイントです。
失敗した場合の対応を決める(計画)
基準通り調理できなかった食品をどうするかを決めておきます。例えば、揚げ物の温度が十分でなかった場合は、再度加熱するのか廃棄するのか、予定より長く冷却時間がかかってしまった食品はどうするのかなど、事前に決めておく必要があります。決めたことを正しく行っているか確認して記録(記録)
記録をとることで、日頃の衛生管理が正しく運用されているか否か明確になります。何より食中毒の疑いを掛けられた時に、自分たちが決めたルールをしっかり守っている証拠として提出できるというメリットがあります。調理マニュアルに反映
調理マニュアルやレシピ表がある場合には、そこに管理ポイントを反映すると良いでしょう。 いつも使っているシートにポイントを書き足すことで、「どこに気をつけたらいいか」「どんなことをすれば危害対策できていることになるか」を常に確認することができます。以下はレシピ表に反映した例です。

以下は衛生計画と衛生管理日誌の一例ですので、ご参考に。


HACCPの導入が完全義務化!飲食店の対応:まとめ
衛生管理は、これまでも日常的に行われてきたと思いますが、継続的な記録が必要になりますので従業員の負担は増えそうです。その分他の作業負担を軽くするために、セルフオーダーシステムなど、効率化を図るツールを導入することもひとつの方法だと思います。HACCPを取り入れた衛生管理をすることで、事前に異常に気づくことができ、大きな問題の発生を防ぐことができます。従業員の意識向上にも繋がり、業務改善について考える機会にもなるため、HACCPを導入するメリットは大きいのではないでしょうか。
厚生労働省:HACCP(ハサップ)の 考え方を取り入れた食品衛生管理の手引き(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000158724.pdf)を加工して作成。