飲食店お役立ちコラム

2026.03.2

経営

人手不足と利益圧迫を解決する「省力化投資」の具体策と補助金ガイド

モバイルオーダー

日々の店舗運営において、「募集をかけても人が集まらない」「アルバイトがすぐ辞めてしまう」「店長や社員の負担が大きい」といった課題を抱えていませんか?飲食業界では現在、慢性的な人手不足に直面しています。こうした状況を背景に、農林水産省と厚生労働省は令和7年6月に「省力化投資促進プラン―飲食業―」を発表しました。
この記事では、このプランをもとに、なぜ今省力化が必要なのか、具体的にどのような設備やITツールを導入すべきか、そしてその資金の調達方法について解説します。

1. 飲食業界の現状と省力化が必要な背景

まず、業界全体の現状を把握しましょう。飲食業は国内で約400万人の雇用を生み出していますが、そのうち約78%をパートタイム労働者が占めています。さらに、事業者の98%は資本金5,000万円未満の中小事業者です。

現在、特に課題となっているのが人材不足です。職種別の有効求人倍率を見ると、ウェイターやウェイトレスなどの接客で5.0倍、調理職で2.9倍と高い水準で推移しています。さらに、店長やマネージャーなどの店舗管理業務では10.0倍に達しており、現場運営と管理を担う中核人材が不足している状況です。

また、飲食業は労働集約型の産業であるため、従業員1人あたりの付加価値額を示す労働生産性は219万円と、全産業平均の917万円と比較して約4分の1にとどまり、時系列で見ても減少傾向にあります。このままでは現場の負担が増し、事業の継続に影響が出る懸念があります。そのため、人に依存しすぎない仕組みづくり、すなわち省力化投資が経営の重要な課題となっています。

2. 業務別の省力化投資と導入事例

省力化を進めるにあたり、プランでは飲食店の業務プロセスを「調理」「接客」「店舗管理」の3つに分け、それぞれの課題と解決策を提示しています。

調理業務:労働環境の改善と品質の安定

調理現場では、「アルバイトが即戦力にならない」「夏の厨房が暑い」といった課題があります。これを解決する手段として、調理ロボットやスチームコンベクションオーブン(スチコン)の導入が挙げられます。

ある中華料理店では、計量から調理までを行う炒め物ロボットを導入し、毎時30食の提供スピードを実現しました。また、ガス火を電磁調理に変えたことで厨房の暑さも解消され、従業員の労働環境が改善されました。カフェでのスチコン導入事例では、ハンバーグを一度に20〜30個仕込めるようになり、回転率の向上と新メニュー開発の時間を確保できるようになっています。

接客業務:肉体負担の軽減とサービスの向上

接客業務では、「注文や会計のミス」「配膳の遅れ」「重い料理や食器を運ぶ負担」が課題です。これらに対しては、配膳・下膳ロボットやモバイルオーダー、セルフレジの導入が効果的です。

あるラーメン店では、配膳ロボットの導入に合わせて座敷をすべてテーブル席に改装しました。これにより回転率が上がったほか、スタッフが重いものを運ぶ負担から解放され、お客様への接客に時間を割けるようになりました。モバイルオーダーの導入はオーダーミスを減らすだけでなく、約0.7人分の業務削減や、紙のメニュー印刷代の削減、価格改定へのスムーズな対応といった利点があります。

参照記事:【配膳ロボット】人手不足を解消するテクノロジー

店舗管理業務:バックオフィスの効率化

店長の負担となっているのが、手書き伝票やExcel入力による売上管理、シフト管理、食材の在庫管理です。これらの解決には、在庫管理・食材発注システムやクラウド販売管理ツール、労務管理ソフトなどのITツールの導入が必要です。 システムの導入により、属人的な発注ミスや食材ロスを防ぎ、店長の業務負担を削減することが可能になります。

3. 自社の規模に合わせたステップアップ戦略

省力化は、自社の規模に合わせて段階的に進めることが大切です。

小規模・個人事業者の場合

まずは業務の課題を洗い出した上で、取り組みやすいモバイルオーダーやクラウド会計など、ITツールや設備の導入から始めるのが適しています。

中堅・大規模事業者の場合

ITツールや機器の導入に加え、配膳ロボットや自動調理器を効率的に活用できるよう、厨房や店舗のレイアウト変更を含めた投資を行うことで、より大きな生産性の向上が見込めます。

4. 活用できる補助金や支援策

省力化のための投資資金をサポートするため、政府はいくつかの支援策を用意しています。

中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)

券売機、自動精算機、配膳ロボット、清掃ロボット、スチームコンベクションオーブンなど、人手不足の解消に役立つ製品がカタログとして用意されています。対象製品を選んで導入することで申請でき、補助率は1/2に設定されています。

IT導入補助金

受発注システムや労務・給与管理ソフトなどのソフトウェア導入に活用できます。過去には、タブレットでのセルフオーダーシステムを導入し、回転率を上げて売上を40%成長させたカフェの事例もあります。

参照:セルフオーダーシステム機能紹介

日本政策金融公庫の資金繰り支援

設備投資に向けた低利融資のほか、従業員の賃上げに取り組む事業者に対して、貸付利率を最大マイナス0.5%引き下げる賃上げ貸付利率特例制度が用意されています。

専門家による伴走支援

各都道府県の生活衛生営業指導センターなどを通じて、中小企業診断士等の専門家から経営診断や補助金・税制活用の無料アドバイスを受けることができます。

まとめ:これからの飲食業界のあり方

政府は、2029年度までに飲食業の労働生産性を2024年度比で35%向上させるという目標を掲げています。令和7年度中には、業態ごとの実態に合わせたガイドブック(飲食業における省力化投資促進行動計画)も策定される予定です。

人手不足が続く中、従来のやり方を維持することは経営上のリスクになる可能性があります。省力化投資は、単なるコスト削減や機械化にとどまらず、従業員が働きやすい環境を整え、お客様へ安定した料理とサービスを提供するための投資と言えます。

まずは自店舗の課題が調理、接客、店舗管理のどこにあるかを整理し、活用できる補助金制度を確認した上で、できるところから省力化の取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

出典 農林水産省:省力化投資促進プラン―飲食業―令和7年(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/attach/pdf/index-46.pdf)を加工して作成

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