飲食店お役立ちコラム

2022.01.10

集客

ユネスコ無形文化遺産「和食文化」を見直そう

ユネスコ無形文化遺産「和食」

2013 年12月、和食(日本人の伝統的な食文化)がユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、和食は国内外で大きな注目を集めてきました。訪日外国人消費動向調査(2019年)によると、訪日外国人が訪日前に期待していたことでは、「和食を食べること」が約7割と最も多い結果がでています。

この記事では、ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食文化」について紹介していきます。

ユネスコ無形文化遺産とは

「無形文化遺産」とは、芸能や伝統工芸技術などの形のない文化であって、土地の歴史や生活風習などと密接に関わっているもののことです。ユネスコの「無形文化遺産保護条約」ではこの無形文化遺産を保護し、相互に尊重する機運を高めるため、登録制度を実施しました。2010年には「フランスの美食術」などの食に関する無形文化遺産が登録されています。

これを受け、国内でも和食文化をユネスコ無形文化遺産に登録しようという機運が高まり、有識者の検討会で和食文化の内容等を検討した結果、日本の食文化を特徴づけるキーワードとして「自然の尊重」を抽出、その特徴がまとめられ、2012年3月に「和食:日本人の伝統的な食文化」と題してユネスコへ登録申請されました。

ユネスコ無形文化遺産の登録により和食文化は人類共有の財産となり、無形文化遺産の保護に関する条約に基づき、その保護と継承を図ることが締約国である日本国政府に義務づけられたのです。

ユネスコ無形文化遺産における和食文化

ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食:日本人の伝統的な食文化」とは、個々の料理やメニューのことではなく、私たちの生活の様々な場面に見られる「自然の尊重」という精神に則った日本人の食慣習を指します。

南北に長く、四季が明確な日本には多様で豊かな自然があり、そこで生まれた食文化もまた、これに寄り添うように育まれてきました。このような「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」が「和食:日本人の伝統的な食文化」と題して、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。

ユネスコ無形文化遺産「和食文化」の登録内容

1. 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

  • 明確な四季と地理的多様性により、新鮮で多様な山海の幸を使用。
  • 食材の持ち味を引き出し、引き立たせる工夫。

2. 健康的な食生活を支える栄養バランス

  • 米、味噌汁、魚や野菜・山菜と いったおかずなどにより食事が バランスよく構成。
  • 動物性油脂を多用せず、長寿や肥満防止に寄与。

3. 自然の美しさや季節の移ろいの表現

  • 料理に葉や花などをあしらい、美しく盛り付ける表現法が発達。
  • 季節にあった食器の使用や部屋のしつらえ。

4. 正月などの年中行事との密接な関わり

  • 正月を始めとして、年中行事と密接に関わった食事の時間を共にすることで、家族や地域の絆を強化。

「ユネスコ無形文化遺産」和食文化に対するイメージ

2011年の国の調査では「日本食文化は世界に誇れるものだと思う」と回答した人は 99.2%(強くそう思う・そう思う合計)、「日本食文化を保護し、価値を高め、子どもや孫の世代にも伝えることは重要だと思う」とする人も 98.4%(強くそう思う・そう思う合計)にのぼりました。

また、農林水産省が令和元年度に実施した調査において、国内での食に対するイメージは、「健康に良い (49%)」「季節を感じられる(45%)」「旬のものがおいしく食べられる(44%)」「栄養バランスが良い(42%)」、などポジティブなものが多くありました。

しかし一方、「調理が難しい(21%)」「準備や片付けに手間がかかる(20%)」「価格が高い(14%)」「塩分が高い(13%)」というネガティブなイメージも少なからずあることが明らかになりました。

また、和食の主食として重要な位置づけにある「ごはん」について「お米を1日に一度は食べないと気がすまない」とする人は、1992年当時は71.4%のところ、2020年には42.8%と28.6%減少。「和風の料理が好きだ」とする人も 65.8%(1998年)から45.3%(2020年)と20%以上減少しています。日本の「食文化」継承への国民の意識は高いものの、その一方で、和食への嗜好は低下していることがわかりました。

ユネスコ無形文化遺産「和食」を見直そう:まとめ

世界では和食への関心が高まり続けており、農林水産物の輸出量も、海外都市にある和食レストラン数も増えています。元より「和食=ヘルシー・健康的」というイメージがありまししたが、無形文化遺産登録をきっかけに、より広く注目を集めるようになったのです。

それに対して、日本国内ではお米の消費量は年々減少し、三大栄養素である、たんぱく質、脂質、炭水化物の摂取割合を示すPFCバランスは崩れ、調理法や伝統を次の世代へ伝える機会を失いつつあります。さらに調査結果では、良いイメージを持っている人が多いにも関わらず、実際には和食への嗜好が低下していることがわかりました。

ユネスコ無形文化遺産に登録され、世界が認めた健康的な食文化でありながら、とてももったいない事ですね。外食においても、近年増加している一人客向けの和食メニューや、若い人が好みそうな新しいメニューの開発などで、工夫している飲食店があります。そういった店舗が増えることで和食の良さが見直され、和食文化が継承されていくことを期待します。

農林水産省:和食文化の更なる価値創造に向けて(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/attach/pdf/teigen-1.pdf)
農林水産省:ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食:日本人の伝統的な食文化」とは(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/index.html)
文化庁:令和2年度「⽇本の⾷⽂化等実態調査」報告書(https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/syokubunka/pdf/93106101_01.pdf)
を加工して作成

最新記事

カテゴリー