飲食店お役立ちコラム

2026.11.2

経営

健康に配慮したメニューは売れない?飲食店経営者の意識調査から見えた課題

健康志向メニュー

外食を利用する人が増える中、飲食店でも健康的な食生活を支える環境づくりが進められています。
一方、現場では「健康に配慮したメニューは売れるのか」「男性客や会社員が多い店では、ヘルシーなメニューはあまり求められないのではないか」といった疑問や不安もあるようです。
こうした経営者の考え方に着目したのが、「飲食店における健康な食環境整備の推進」を目指した調査研究です。飲食店経営者の回答を分析したところ、「健康な食事は売れない」と考える背景には、店舗の客層や健康な食事に対するイメージが関係していることが示されました。健康に配慮したメニューを提供するうえで、どのような課題があるのでしょうか。
本記事では、調査結果を分析した論文をもとに、経営者が抱える懸念や、健康な食事の提供を広げるために今後求められる取り組みについて紹介します。

調査結果:約6割の経営者が「健康な食事は売れる」と回答

まず、飲食店経営者が健康な食事の売れ行きをどのように考えているのか、調査結果を見てみましょう。「健康な食事を提供すると売れないと思うか」という質問に対し、経営者の回答は大きく2つに分かれました。

  • 「売れる(売れないと思わない)」と回答:約6割

  • 「売れない」と回答:約4割

半数以上の経営者が「健康な食事でも売れる」と考えている一方で、約4割は売れ行きに不安を感じていることがわかります。

「売れない」と考える店舗に共通する客層の特徴

経営者の考え方と店舗の客層をあわせて分析したところ、「健康な食事は売れない」と回答した店舗には、次のような傾向が見られました。

  • 男性客が多い店舗
    女性客が多い店舗と比べ、男性客が中心の店舗では「健康な食事は売れない」と考える経営者の割合が高い傾向にありました。

  • 会社員などの勤務者が多い店舗
    利用客の大半を会社員などの勤務者が占める店舗でも、同じ傾向が確認されました。

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こうした背景には、「しっかり食べて満腹感を得たい」という男性客や勤務者のニーズを意識していることが考えられます。そのため、これらの客層が中心の店舗では、健康志向メニューの提供に慎重になりやすい傾向がうかがえます。

健康な食事に対するイメージと導入時の課題

調査では、経営者が健康な食事にどのようなイメージを持っているのか、また、提供する際に何を課題と感じているのかについても分析しています。

健康な食事のイメージ:「低エネルギー・低脂質・減塩」に偏る傾向

「売れない」と回答した経営者は、「売れる」と回答した経営者に比べ、健康な食事を「エネルギーが低い」「脂質が少ない」「塩分が少ない」食事だと考える傾向が強いことがわかりました。
この結果から、健康な食事をカロリーや脂質、塩分を抑えたものと捉えることが、売れ行きに対する認識と関係している可能性がうかがえます。

メニューを提供する際に感じる主な課題

また、「売れない」と考える経営者は、健康な食事を提供する際、次のような点を課題に感じる傾向がありました。

  • 商品単価の上昇:健康な食事の提供によって販売価格が高くなることへの懸念

  • 味の満足度の低下:味が落ちたり、物足りなくなったりする不安

  • 調理や仕込みの作業効率の低下:主食・主菜・副菜をそろえる手間

  • ボリューム感(満腹感)の減少:食べ応えがなくなることへの懸念

特に、ボリューム感がなくなることを心配する経営者が多く、男性客などに満足してもらえる食事と、健康への配慮をどう両立するかが課題となっています。

客層ニーズの捉え直しと課題解消に向けたアプローチ

健康な食事の提供にあたって生じる懸念に対し、調査結果を分析した論文の考察では、顧客の実態と先行事例を踏まえた今後の方向性が提示されています。

1. 客層ニーズの捉え直し(顧客の視点)

男性客や勤務者層の利用が多い店舗では、「満腹感を得たい顧客が多いため、健康な食事は求められていない」と捉えられやすい傾向があります。しかし、顧客の健康管理や提供されている食事の実態を俯瞰すると、以下の点が指摘されています。

提供量と適正基準のギャップ

首都圏の飲食店25店舗で提供される定食48食を調べた先行研究では、エネルギー量の中央値は935kcalでした。また、650kcal以上の定食39食のうち、約7割がスマートミールの「しっかり」の基準上限である850kcalを超えていました。
経営者の想定する「標準サイズ」が推奨量より大きいという指摘もあり、顧客ニーズに応えようとする結果として過剰な量の提供になっている可能性が挙げられています。

成人男性における適正摂取の必要性

肥満は成人男性の健康課題の一つであり、男性客であっても適正量を摂取できる食環境の整備が求められています。経営者側が男性ニーズとしての「健康な食事」を十分にイメージできていない可能性が考察されています。

2. 課題解消に向けた今後のアプローチ

調査において「売れない」と考える経営者が抱える障壁(商品単価、作業効率、ボリューム感、味)に対して、研究では以下の支援や工夫の必要性が論じられています。

「おいしく提供できる」という事例や工夫の共有

先行研究では、健康な食事を提供する事業者から、調理の工夫によって健康的な食事もおいしく提供できることを顧客に知ってもらえたという経験が報告されています。手本となる食事の好事例や工夫を広く紹介していくことが、経営者の心理的なハードルを取り除くために有効であると考察されています。

経済的な懸念の払拭と具体的な工夫の提案

調査の結果、「野菜が多いと単価が上がる」「主食・主菜・副菜を揃えると作業効率が落ちる」といった具体的な懸念の構造が明らかになりました。そのため、経営者の経済面での懸念を払拭することに加え、店舗に向けた「現場の障壁に対する具体的な工夫の提案」を行っていくことが今後の重要な課題として挙げられています。

まとめ:飲食店と利用客をつなぐ食環境づくりの展望

調査では「健康な食事は売れない」と捉える背景に、顧客層の影響とともに、経営者が持つ「低エネルギー・低脂質・減塩」「ボリューム感がなくなる」といったイメージが関わっていることを明らかにしました。今後の課題として、経済面での懸念の解消や、現場で参考にできる好事例、具体的な工夫の情報提供が挙げられています。
自店の味や持ち味を大切にしながら、顧客が無理なく選べる健康的なメニューを用意することは、日常的に利用する常連客への新たな価値提供や、店舗の魅力向上につながる選択肢の一つとなるでしょう。

出典:J-STAGE 飲食店経営者の健康な食事に対する信念(https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi/80/3/80_169/_pdf/-char/ja)

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