飲食店お役立ちコラム

2026.01.5

経営

国産食材が「選ばれる理由」になる時代|コストではなく価値で考える経営へ

国産食材

原材料費の高騰が続く中で、価格改定の必要性を感じながらも踏み切れずにいる飲食店は少なくありません。「値上げをすれば客離れが起きるのではないか」「常連客にどう説明すればいいのか」という不安は、現場で真摯にお客さまと向き合っているからこそ生じる切実な悩みです。

しかし一方で、社会の価値観は大きな転換点を迎えています。食料安全保障への懸念や円安による輸入食材の不安定化を受け、消費者の間では「国産食材」への信頼と関心がかつてないほど高まっています。これは一時的なブームではなく、本質的な「安心・安全」や「国内生産者への貢献」を重視する新しい消費スタイルの現れと言えるでしょう。この変化は、コスト増という厳しい局面を、「お店の評価」をさらに高めるチャンスへと変えていく可能性を秘めています。

本記事では、国産食材を「値上げの理由」ではなく、お客さまに「選ばれる理由」へとつなげていくための視点と、現場で活かせる考え方を整理します。

データがから見る「国産」の需要

実際に今の消費者は、何を基準に店や食材を選んでいるのでしょうか。その現状を捉える手がかりとして、令和7年6月に発表された「食生活・ライフスタイル調査(令和6年度)」の結果をもとに、食にどのような価値を置き、飲食店に何を求めているのかを整理していきます。

1. 国産食材と価格

現在、飲食店にとって最大の悩みは原材料費の高騰に伴う価格設定でしょう。調査によれば、消費者が食に関して重視することとして「同じような商品であればできるだけ価格が安いこと」が最も高い割合を占めています。しかし、注目すべきはその直後です。「できるだけ日本産の商品であること」を重視する層も、安さ重視の層と僅差で続いています
特に生鮮食品(米、野菜、精肉、鮮魚)において、「できるだけ国産を選ぶ」と回答した人は全体の62.5%に上ります。

こうした消費者意識を踏まえると、国産食材はコスト増加だけではなく、収益の向上につながる可能性があると言えます。

国産ブランドを活かした利益率向上

価格が割高であっても国産食材を選ぶという消費者の許容度を詳しく見ると、以下のようになっています。

  • 「1割高までなら国産を選ぶ」という回答が32.9%で最多。

  • 「2割高までなら選ぶ(7.9%)」「3割高までなら選ぶ(5.8%)」を合わせると、約47%の消費者が、1割以上の価格差があっても国産を支持する意向。

これらのデータは、「国産食材を使用していること」を明確に伝えることで、1割程度の価格アップは受け入れられることを示唆しています。

2. 高齢層の「旬」と若年層の「体験」

今回の調査では、年代や性別によって食に対する価値観が明確に異なることが浮き彫りになりました。

  • 高齢層(65-74歳)へのアプローチ: 特に女性の62.6%が「国産であること」を重視しています。さらに、国産を選ぶ理由として「旬の食材で今しか購入できないから」という回答が、この層では突出して高い傾向にあります。

  • 若年層(15-34歳)へのアプローチ: 15-24歳の層では、約4割が「輸入食品より高ければ国産は選ばない」としており、価格にシビアです。しかし、「イベントなどで実際に試食し、品質の良さやおいしさがわかったから」国産を選ぶという回答が他の世代より高く(1〜2割)、体験を通じた価値理解が進みやすい特徴があります。

こうした年代ごとの価値観の違いは、メニューづくりや訴求方法を考える上で重要なヒントになります。

世代ニーズを掴むメニュー開発と集客戦略

高齢層をターゲットにするなら、「国産×旬」をキーワードにした期間限定メニューの展開が考えられます。一方、若年層を取り込むには、まずは「体験(小皿での試食提供など)」を通じて味を知ってもらうこと、そして「SNS映え」や「人気・評判」を意識したアプローチが有効です(15-34歳の層では、人気があるものを選ぶ傾向が他世代より高いため)。

3. 消費者が求めている「情報」を伝える

「どのような情報があれば、農業・農村をより身近に感じるか」という問いへの回答は、そのままメニューの「キャッチコピー」として活用できます。

  1. 健康的な食生活に関する情報(24.1%)

  2. 地域の特色のある農産物や特産品についての情報(23.1%)

  3. 日本各地の農業・農村の魅力についての情報(21.0%)

顧客の知的好奇心を満たすお品書きの工夫

これらは、消費者が「知りたい」と思っている情報そのものです。単に「レタス」と書くのではなく、「〇〇地域の特産品で、健康をサポートする栄養が豊富な、生産者の顔が見える野菜」といったストーリーを添えることで、消費者の納得感と満足度は飛躍的に高まります。

外食産業における国産品消費等の現状

ここまでは消費者の意識やニーズを見てきました。次に、視点を業界側に移し、外食産業全体では国産食材がどのように扱われているのかを確認していきます。

国産食材の仕入量の変化(10年前との比較)

外食における国産食材仕入量は、10年前と比べると、全体ではわずかに減少となっているものの、業態によってばらつきがみられる。近年、国産品では生産者や産地の情報を表示することで安心感を訴求する取組もみられる。

引用元:引用食品需給研究センター 第4章 国産品消費等の現状(https://www.fmric.or.jp/stat/kome_jikyu/4genjyou.pdf)

全体で微減しているものの、産地情報を表示する取り組みが増えている点は、消費者の意識が「量より質(透明性)」にシフトしていることを示唆しています。

国産食材の仕入量が減少した理由

外食における国産食材の仕入量が減少した理由についてみると「価格が高いこと」「需要の低迷」が上位2つになっている。

引用元:引用食品需給研究センター 第4章 国産品消費等の現状(https://www.fmric.or.jp/stat/kome_jikyu/4genjyou.pdf)

外食産業では、産地表示による安心感の訴求で国産食材を増やす業態も見られますが、価格の高さや需要の低迷、さらに国産比率が高い層ほど直面する安定供給の難しさが障壁となり、全体としての仕入量はわずかな減少傾向という結果になったと思われます。

主要な国産原料の今後の利用意向

外食における国産食材の今後の利用意向についてみると、その他を除いた業態で利用拡大の見通しとなっている。なかでも、パブレストラン/居酒屋は国産食材の利用拡大見通しが顕著となっている。

引用元:引用食品需給研究センター 第4章 国産品消費等の現状(https://www.fmric.or.jp/stat/kome_jikyu/4genjyou.pdf)

特に居酒屋業態において、これまでの仕入れのあり方を見直し、『国産食材による価値の提供』を重視しようとする姿勢がうかがえます。大規模なチェーン店が全店一斉の供給体制を整えるのに時間を要する中で、自店の判断でいち早く国産食材の魅力を取り入れること。それは、地域の方々に長く信頼され、選ばれ続けるお店づくりにおいて、一つの有力な方向性を示していると言えそうです。

このように、多くの飲食店が国産食材の活用に前向きな姿勢を見せている背景には、前段で触れた『国産という価値を支持する消費者の層』が着実に存在していることがあります。作り手(店側)の意欲と、受け手(お客さま)のニーズが重なり合い始めている点は、今後の経営を考える上で見逃せないポイントです。

国産食材が「選ばれる理由」になる時代|コストではなく価値で考える経営へ:まとめ

原材料費が高騰する中、国産食材の活用は「コスト増」を「お店の価値」へ変える鍵となります。産地やストーリーを丁寧に伝えることで、納得感のある価格改定と満足度向上が可能。国産は天候による供給不安が課題ですが、それを逆手に取り「入荷がある時だけの限定メニュー」や「日替わり枠」で運用することで、欠品を「鮮度と本物の証」という価値に変換できます。また、高齢層の「旬」や若年層の「体験」といった世代ごとのニーズを捉えたメニュー開発も有効な戦略です。
仕入れや価格面の課題はありますが、消費者の高い信頼とニーズに応える国産食材へのシフトは、他店との差別化を図り、選ばれ続ける店づくりのための着実な一歩となるでしょう。

関連記事:付加価値を高める「国産小麦」に注目|飲食店のメニュー作りに役立つ活用ガイド

出典 「食生活・ライフスタイル調査 ~令和6年度~ 調査報告書」(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/survey/attach/pdf/lifestyle-8.pdf)

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