2021.03.26
経営
飲食店も使える!話題の「事業再構築補助金」とは?
新型コロナウイルス感染拡大に伴う2度の緊急事態宣言の発令は、飲食店をはじめ多くの店舗や企業に多大な影響を与えています。飲食店の中には、経営状況が厳しくなり、店舗の売却や規模の縮小、あるいは大きな業態転換を迫られているところもあるでしょう。
そうした状況を鑑み、経済産業省は、新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築を目指す企業等への支援を目的とした「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)」の公募が開始されました。
そこで今回は、飲食店を対象に、経産省の最新発表なども踏まえ、現時点で分かっている「事業再構築補助金」制度について紹介します。
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「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)」とは
「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)」とは、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、事業再構築を目的として新事業の展開や業態変換にとりくむ中小企業に対し、最大1億円の資金補助を行う制度です。
申請要件
具体的な申請要件および対象者は以下の通りです。
- 申請前の直近6ヶ月のうち、任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ以前の同3ヶ月の合計売上高と比べて10%以上減少していること。
- 事業計画を認定経営革新等の支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組むこと。
- 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0 %(一部5.0%)以上の増加を達成すること。
ちなみに、「コロナ以前」とは、2019年又は2020年1~3月を指します。「任意の3か月」は連続している必要はありません。
申請枠と補助額
申請枠と各補助額は下記4つです。
中小企業
通常枠 | 卒業枠 |
---|---|
100万円~6,000万円 | 6,000万円超~1億円 |
補助率 2/3 | 補助率 2/3 |
※卒業枠は400社限定。事業計画期間内に①組織 再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、中小企業者等から中堅・大企業等へ成長する事業者向け。
中堅企業
通常枠 | グローバルV字回復枠 |
---|---|
100万円~8,000万円 | 8,000万円超~1億円 |
補助率 1/2 (4,000万円超は1/3) | 補助率 1/2 |
※グローバルV字回復枠は100社限定。中堅企業であり、以下の条件をすべて満たす企業が対象です。
- 直前6ヶ月間のうち任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ以前の同3ヶ月の合計売上高と比べて、15%以上減少している。
- 補助事業終了後3~5年で、付加価値額または従業員一人当たりの付加価値額の年率5.0%以上増加を達成する。
- グローバル展開を果たす事業である。
なお、気になるのは個人経営の飲食店も申請可能かどうかという点です。経産省・中小企業庁の中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」によれば、「中小企業の範囲については中小企業基本法と同等」と記載されており、中小企業法で定義されている「中小企業」には、個人事業主やフリーランスも含まれています。よって「事業再構築補助金」の対象となる可能性は十分あります。
募集期間
令和3年度中に計4回程の公募を行い、第1回目は3月中に募集を開始する予定とのことですが、情報は随時更新されますので、最新情報については下記のサイトでご確認ください。
ミラサポplus
https://mirasapo-plus.go.jp/infomation/11458/
補助金対象経費の例
主要経費
- 建物費
- 建築改修費
- 設備費
- システム購入費
関連経費
- 外注費(製品開発に要する加工、設計等)
- 技術導入費(知的財産権導入にかかる経費)
- 研修費(教育訓練費等)
- 広告宣伝・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
- リース費
- クラウドサービス費
- 専門家経費
飲食店が注目すべきもう一つの「特別枠」
上記の4つの申請枠の中で、多くの飲食店に当てはまるのが「中小企業 通常枠」ですが、実は、この事業再構築補助金には「緊急事態宣言特別枠」という特別枠が設けられています。小規模の飲食店は、まずはこちらを検討してみるほうがよいかもしれません。
申請要件
申請要件の①~③に加え、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が「対前年または対前々年の同月比で30%以上減少していること。
補助額・補助率
従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
---|---|---|
5人以下 | 100万円~500万円 | 中小企業:3/4 中堅企業:2/3 |
6~20人 | 100万円~1,000万円 | |
21人以上 | 100万円~1,500万円 |
メリット
こちらの特別枠のメリットは、「中小企業 通常枠」より迅速な審査・採択が行われることです。また、この「緊急事態宣言特別枠」で不採択の場合でも、「中小企業 通常枠」で再審査を受けることが可能です。
どんな取り組みが「事業再構築補助金」の対象になる?

例えば「店舗を閉鎖し、ECサイトのみで販売」「一定料金でメニューの一部がテイクアウトし放題になる飲食店サブスクリプションサービスを導入」「店舗を持たず、テイクアウトやデリバリー、オンライン販売のみで営業するゴーストレストラン」など思い切った方策もありますが、その他の分かりやすい例としては以下の通り。
「事業再構築補助金」の対象となる取り組み例
新分野展開
喫茶店・カフェの例
飲食スペースを縮小し、新たにコーヒー豆や焼き菓子のテイクアウト販売を実施
居酒屋経営の例
オンライン専用の注文サービスを新たに開始し、宅配や持ち帰りの需要に対応
業態転換
レストランの例
店舗の一部を改修し、新たにドライブイン形式で食事のテイクアウト販売を実施
弁当販売の例
新規に高齢者向けの食事宅配事業を開始。地域の高齢化へのニーズに対応
焼肉店の例
お一人様の需要に対応するため、店舗を新たに取得し、一人焼肉の業態を新規オープン
スナック・ラウンジの例
ZOOMを活用したオンライン・スナックを展開。インターネットで非対面のサービスを提供
事業転換
洋菓子・和菓子店の例
和菓子や洋菓子の製造ノウハウを活かし、料理教室の開催やレシピを販売
ラーメン店・うどん屋・蕎麦屋の例
自店の人気商品を冷凍食品として商品開発し、スーパー等に卸売り販売
「事業再構築補助金」申請に当たっての注意点は?
補助金を申請するにあたっては、いくつか注意したい点があります。
1.補助金の支給は後払い
補助金の支給は、原則、補助事業実施期間終了後(採択決定から1年程度あと)に、支出経費を確認した上で支払われます。つまり6,000万円の補助を受ける場合は、少なくとも9,000万円の資金が先に必要になります。この資金調達のために、金融機関とも事前に相談しておく必要があります。
2.見積書を揃えておく
補助金をどこにいくら投資するのか、見積書の提出が必要になります。申請に間に合うよう事前に見積もりをとっておきましょう。
3.電子申請に必要な「GビズIDプライム」の取得
経済産業省では「jGrants(Jグランツ)」という補助金の電子申請システムを利用しており、事業再構築補助金の申請は、このシステムから申請することになります。そして、電子申請システムを利用するには「GビズIDプライム」というIDの取得が必須。取得は無料で、いつでもできますが、発行までに3週間程度(状況によっては3週間以上)かかるため、事前に取得しておきましょう。
「GビズIDプライム」の取得はこちら
https://gbiz-id.go.jp/top/index.html
4.認定支援機関や金融機関と策定した事業計画書が必要
経営革新等支援機関(認定支援機関)とは、専門知識・実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定する公的な支援機関です。金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等が認定されています。
今回の要件のひとつである、「事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む」ことを証明するには、経営革新等支援機関もしくは金融機関の押印がなされた事業計画が必要です。こちらも早めに準備しておきましょう。
認定経営革新等支援機関(中小企業庁)
「事業再構築補助金」まとめ
今回の「事業再構築補助金」は「中小企業 通常枠」でも上限6,000万円(補助率2/3)まで設定されており、対象となる経費も幅広く、飲食店も利用しやすいのが特徴です。そして何より、補助金は返済する必要がないというのが最大のメリット。
ただし、そのためには採択されなければなりませんが、「事業再構築補助金」の採択率は全国平均で40%程度と言われています。
そこで重要なのが、事業計画書の内容と実現性です。前述のように経営革新等支援機関と相談し、早めにしっかりと作っておくようにしましょう。
出典:中小企業庁 事業再構築補助金(https://mirasapo-plus.go.jp/infomation/11458/)
経済産業省 事業再構築補助金の概要(https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/summary.pdf)を加工して作成